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【映画感想】シン・仮面ライダー

〇前書き

久しぶりに映画を見にいった。新宿ピカデリーで見た「すみっコぐらし」以来だと思う。特に映画が好きなわけでもない自分がなぜこの「シン・仮面ライダー」を見にいったのか。そのあたりを序章としたい。

理由があるとすれば、それはTikTokの広告だ。それ以外の理由は見つけることができない。この広告が私の厨二心を存分に掴んで離さなかったのである。

ショート動画の広告としては、個人的には完璧だった。内容はよくわからないが、なんだか登場人物がそれっぽいことをいう。そして、雰囲気は漏れなく暗い。

例えば、ハチオーグとルリ子のやり取りなんてすごくよかった。もちろんハチオーグが何かなんてのは、全くわからないのだが、西野七瀬のたどたどしい感じで一生懸命女王バチを演じている感じは妙にそそる。そして、セリフは、明らかに緊迫しているシーンなのに、「戻ってきて、ルリルリ」(うろ覚え)みたいな若干過去に何かあったようなことを諭すセリフ等。

その他にも、同じように、妙に残るものが多かったのが、このTikTokの広告だった。そうして、まんまと広告の効果にしてやられて、本日ついに映画館まで足を運んだといことになる。

ネットの評判では「意味不明」「自己満」「爆死」等ネガティブな評価が多かったように思う。まあ、でもそれもそうだよなぁ、と見る前からなんとなくそんな感じも受け入れながら鑑賞に向かったのだった。

大衆に受けないからこそ、自分は好き。もちろん映画上映されている時点で大衆にはそれなりに受け入れられているのだが、それでも多くの人には良さがわからないものに対し、自分だけがその良さをわかっていると錯覚して、ある種の特別感を感じて安心感を得るという、なんともひねくれた特性を持っている。

この特性ですら、特徴でもなんでもなくて、広く一般的なものなのだろうけれども、そういった都合の悪いことはとにかく無視するのに限るのだ。

ということで、感想。あらすじは割愛。

〇感想

まず一言。面白かった。面白いという表現が適当であるかどうかは難しいところではあるが、僕は好きだった。予想通り。

全体的に暗い雰囲気。しっかりした説明もなく、視聴者を置いてけぼりにして、どんどん説明と展開が進んでいくパターン。いろんな物事や描写を省略しながら、それっぽい雰囲気を作っていく。細かいことは気にしてはいけない。この映画では、それは蛇足でしかないのだから。

演技をしている俳優ですら、おそらく完璧には、意味がわかっていなさそうな状態で演じているような気もしてくる。メタ構造だがこれがまた良い。なんと表現していいのかわからないけれど、池松壮亮も浜辺美波も非常に上手に棒っぽい演技をしているのが絶妙だ。

単に感情を殺しているのではなく、無理に感情を殺していて、それがあえて伝わるような演技をしているような気がした。もちろん、考えすぎかもしれないが、それがこの映画の雰囲気を作っているような気がした。

この映画に笑顔なんてほとんどない。一文字が登場してからは、何度か笑顔のシーンがあったが、その他に笑いなんて一切ない。少しくらい笑いがあるのが自然というものだと思うが、あえてその笑い、笑顔を消すことで、なんとも不思議な空間を作っている。

そして、ルリ子のビデオレターの笑顔、人間らしさが垣間見えるシーンが救いなのだろうとも思う。

最初のクモオーグのシーンも良い。全然説明なしにいきなり登場。そして、戦闘。ほとばしる血。めっちゃ血が出る。そこそこグロい。マスクで演技なんてよくわからないが、セリフの感じもいかにもボスに仕える忠実な部下っぽくて最高だ。

戦闘の末あっけなくやられてしまうが、つかみとしては非常に良いし、仮面ライダーの生みの親(先生)がクモオーグにやられてしまうという意味でも持ち場は十分。

次のコウモリオーグのところでは、政府の人間が登場。この竹野内豊と斎藤工がまた良い味を出している。多くを語らない。それほど前にも出てこない。

結局、コウモリオーグもすごくあっけなくやられてしまう。あの辺も意味を求めちゃいけないのだろう。

そして、ハチオーグ。これは良かった。西野七瀬がはまりすぎている。このキャスティングはすごい。ぎこちないが、自信満々に女王バチを演じているのがなんとも上手い。会話劇という意味では、ルリ子とハチオーグのやり取りはいろいろとバランスが悪くて、それがすごく心地良い。

ルリ子とチョウオーグが兄弟関係だったり、結局母親も良くわからないし、一文字もどこからどうやって来たのかよくわからなかったりするけれど、まあその辺は全て雰囲気でOKだ。

特に、チョウオーグがやろうとしていたこと。プラーナと肉体の分離なんかは本当に意味がわからなかったけど、なんとなく雰囲気は伝わる。むちゃくちゃ激強のチョウオーグがあっけなく仮面ライダー二人にやられてしまうところもちょっと残念ではあったが、まあ良いだろう。

結局、雰囲気映画だと思う。ストーリーとかに意味を求めてもだめで、切り取られたそれぞれのシーンに自ら意味と解釈を付けていく、そんな映画だと思う。

〇最後に

なぜ、これほどこの映画に惹かれたのか。先に広告で、と書いたが、もう一つ理由が見つかったような気がする。過去にどこかで同じような経験をしていたような気がするのだ。

それが、CASSHERNだ。当時は映画館にこそ行かなかったものの、普段全く映画を見ない自分がわざわざレンタルビデオを借りて見た記憶がある。この時も、CMなり番宣なりで、非常に気になっていたのだ。

実際に映画の雰囲気もよく似ている。ストーリーの意味なんてよく分からない。主人公が巨大な的と戦っている。でも、よく理由はわからない。そして、暗い。次々と敵が出てくるところも似ているし、そういう意味では、うまく言語化できないけれど、こういった映画が僕好みなのだろう。本当に映画なんて一年に一本も見ないのだけれども。

ということで、GWの終盤に映画を見ることができました。たまに映画館に行くと、やっぱり雰囲気良いなぁと思ったりするので、定期的に何か映画館で見て、体感して、それを言葉に変えて残しておく、という一連の行為をやっていくのも良いな、と思ったり。

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