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衝撃の2部構成だった一冊

バブル期の野村證券で最も稼ぎ、オリンパス事件の容疑で実刑判決を受けた男が、
検察のデタラメなシナリオを、怒りの完全論破!

上記のサイトより

読書前の印象

もう10数年がたつ、オリンパス事件の黒幕とされた人物による、オリンパス事件の真相を語るという一冊かと思いきや、むしろ、その事件に関与する前の野村證券時代の話の方が比重も多いし、内容も良くも悪くも刺激的。

ザ・昭和な野村證券時代の逸話

良い意味での刺激は、トップセールスマンであった著者のように、常軌を逸したほど働く人の働き方というのはいつ見ても清々しい。昭和のサラリーマンというと兎角馬鹿にされがちなのだが、毎日毎日仕事のことを考えてどうやって儲けるかを考えているというのは率直に言ってすごいし、これを組織的にできる組織というのが今も昔もトップにいる。今で言えばキーエンスやビズリーチ、少し前だとリクルートや電通、昭和だとわさわさこの手の企業が存在し、野村證券なんかはその典型と言えた。
悪い意味での刺激的な内容は、今の時代の倫理観から見たら、完全にアウトな証券の売り方。売れそうもない証券の押し売りに近い売り方だったり、顧客の利益にもならない売り方、場合によっては証券会社の独断で売却したりもしている。さらに、著者の日本人観があまりに偏っていて、日本人は証券投資なんかできないというもの。株価の長期低迷も証券会社が損失補填やら総会屋への利益供与やらで営業が減ったせいで、株式を買い支えなくなったからというものであり、これが後々のオリンパス事件の黒幕とされるところに繋がっている気がしている。

オリンパス事件の真相を語る後半

さて、著者は野村證券退職後、コンサル会社を立ち上げ、そこでオリンパスの顧問をやったことがきっかけでオリンパス事件の黒幕とされてしまう。具体的には、オリンパスが内視鏡事業以外の領域で次の稼ぐものを見つけるべく、スタートアアップ企業への投資を始めるわけだが、著者が投資しているところにもオリンパスの投資を呼び込み、最終的にはその投資が過去の損失飛ばしの解消に使われてしまうわけだが、その経緯を詳細に説明している。これを読む限り、どう見ても、損失処理を主導したようには読めないのだけど、オリンパス側の人間が早々に特捜に協力したのに対して、最後まで徹底抗戦した著者に勝ち目はなかったのだろう。と言っても、オリンパスの損失飛ばしのスキームが色々と複雑でわかりにくいため、いまだに誰が悪いかが判断できないのだが。

総評

常軌を逸していた、バブル前の証券会社の会社員の話として面白いし、オリンパス事件の片側から見た真相を暴露する本としても面白い。が、このタイトルはどうなのだろうか。

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