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岩波ホール閉館に思うこと

少し前に話題になりましたが、神保町にある映画館、岩波ホールが2022年7月に閉館するということが決まったようです。

岩波ホールといえば

通常の劇場だと公開をためらうような映画を単館で買い切り、長期間にわたって上映するスタイルを取っています。いわゆる単館系映画館の先駆けで、日本映画興行史においてはミニシアターブームの種まきをしたような位置づけになるのでしょうか。

岩波ホール閉館にあたり押さえておきたいこと

岩波ホールにいってみると分かるのですが、駅直結のビルのうち、ホールは一部分です。現に賃料収入のうち、ホール部分は1割から2割程度で、残りはテナントからの賃料収入のようです。通常の映画館と違い、興行収入で生計を立てるような形でもないというのが、岩波ホールの特徴の1つです。

また、2020年、2021年に大規模な改修工事もやっていましたが、にもかかわらず、このタイミングで閉館というのも妙ですね。もっとも、改修工事を決定したタイミングでは、これほどまでに人流を抑えるような要請が数多く出されるとは想定しておらず、映画館以外にも利用できるという面を考慮すると、そこまでちぐはぐではないと思いますが。

岩波ホール閉館の要因

現在の事業環境だと客足がコロナ前に戻らず、閉館を決めたようです。この背景には二重の要因があり、70年代から80年代に岩波ホールに通った世代がコロナに罹ると重症化するリスクが高い世代であることと、それ以降の世代は映画の受容様式が変わってしまったということにあります。
岩波ホールで上映する映画を観にいこうとする行為は誰も観ていない映画を自分から見つける行為であります。映画を見つける行為ですね。他方、現在の映画は皆が観るものを観ています。映画の評価を探す行為ですね。一部のマニア層を除き、名前も知らない国や作品を観にいくというのは行動様式に含まれていないと思います。なので、コロナでの閉館や客数減少が直接の原因ではあるものの、遠からず閉館になっていたと思われます。

最後に

岩波ホールの閉館は1つの時代の終わりであるのは間違いなく、これほど配信が充実している中で、無名な映画を観るというのが逆に難しくなっているようにも感じます。

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