Hack後にどう生きるかが示唆に富む一冊
橘玲の思想
最近だと「言ってはいけない」シリーズがヒットしている橘玲。彼の思想は昔から一貫していて、一言で言ってしまえば、
①世の中は残酷(不公平)
②その仕組みを踏まえて生き残ろう
ということに尽きる。
例えば、専業主婦は2億円損するという本があり、この本では、①日本の賃金体系は職能式になっていないので、産育休で一時休職しても、休職していない人と比べると賃金で不利、離職はさらに不利、②実際に賃金損失を計算すると少なくとも2億円以上になるので専業主婦なんかやるな、という主張をしている。
これに対する批判としては、出産育児というものはかけがえのないもので経済的価値に還元する方がおかしいとか、専業主婦にも労働価値があり、そのままキャリアを続けていた場合と単純に比較できないとかの反論もあり炎上した。
個人的にはよっぽどの条件がない限り、専業主婦になることは利得よりも損失が多いというのは説得的であるし賛成だけど、この表現に腹が立つ人は多いのではないかと思う。
この著者が好きな表現に黒人は白人よりも知性が低いという言い方がある。これはベルカーブ曲線の説明をする際に、人種別のIQのベルカーブを描くと、中央値と平均値はいずれも白人の方が高いということの裏返しの表現なのだが、これもイラッとさせる表現である。
本書で取り扱うテーマ
本書では5つのテーマを扱っている。恋愛、金融市場、脳、自分、世界の5つである。本の構造としては、①世の中は残酷(不公平)、②その仕組みをうまく活用した=Hackした人の事例を紹介、という構造となっているのだけど、②Hackできたところでその人が幸せかどうかというところまで考えさせてくれる点が本書のいい点だ。例えば、モテる秘訣をHackできた人はその後Sex依存症になってしまい、結局パートナーと別れてしまう話はとても示唆に富む。今の世の中だと、記憶に基づいて性的被害を訴えられるとそれだけで社会的に抹殺されてもおかしくないし、パートナーは限定すべきというところに落ち着く。
そのほか、金融市場の歪みを使って巨万の富を生んだ人、依存症の最新研究、自分とは何か、ミニマニスト、Fireが生まれてくる背景といった話もあり、パラパラと拾い読みでも面白い一冊。
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