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イニエスタ選手の所得申告漏れ問題を考える

2018年から2023年までヴィッセル神戸でプレーしたイニエスタ選手。2018年の所得申告漏れと大阪国税局から指摘され、すでに修正申告や納税は終わっているようだが、今回の指摘は何に基づき、指摘をしたかを考察してみたい。

所得税申告の基本-給与所得

まずは所得税申告の基本として、税務居住者として認定された場所で税務居住者として個人の所得税を申告する必要がある。イニエスタ選手のように、年間の途中で国を跨いで働く場所が変わった場合、183日以上滞在した場所で税務居住者となる。
この場合、移籍前と移籍後で違うチームからそれぞれ給与が支給されることが多いが、税務居住地でまとめて申告する。イニエスタ選手の声明にあるように、これだと二重課税が起きてしまうのだが、国家間で租税条約があれば、それを適用して非居住地で支払った税金分は控除あるいは還付されることとなる。が、ここら辺は国ごとに実務が違っていたりしてスペインで納税した場合の取り扱いがわからないので、一旦、省略。

日西租税条約

1974年から脈々と続いている租税条約があり、最近新しい条約に署名。前の条約が見当たらずだけど、給与に関する取り扱いは変わってないはずなので、上記のルール通りで判定がされるはず。
給与でない場合も、租税条約を締結している場合、どちらか一方にのみ課税権があることが明記されている。この条約の場合、日本かスペインかで課税権がある物については、もう一方では課税しませんよと言う当たり前の話だが、これがない国家間ではそれぞれ課税権を行使できるので、二重課税問題が生じる。

スポーツ選手に関する取り扱い

が、ややこしいことに、スポーツ選手に関する判定は別のものもあり、タックスアンサーの中にその取り扱いが記載されている。租税条約と国内法だと前者が優先されるので、183日いるかいないかでいいかと思うのだが、このタックスアンサーのも見てから判断しないとダメということかな。そして、国税局の指摘はこの判定基準から2018年のシーズンも税務居住者であり、日本での確定申告も必要、さらに、累進課税になるので、税率が変わって追加での税金を払えと言うことかな。

ご質問の場合、日本国籍を保有していないことや、 日本でのプロ契約の期間は、11か月であること、シーズン中、家族を帯同していないこと、シーズンオフには住居を引き払って帰国することから、一般的には、国内に住所(生活の本拠)がある又は継続して1年以上の居所を有しているとはいえないため、非居住者に該当すると考えられます。

タックスアンサーNo2012

結論

イニエスタ選手の言う通り、二重課税が生じやすいこの取り扱いはやめた方がいいのだけど、もっというと、ほとんどの助っ人外国人選手は日本の球団から離れた後、日本に戻ってこないので、どうやって税金を抑えるのだろうかと言う点が気になった。さらに、日本を好きになってくれたイニエスタ選手がこれを機に日本を嫌いにならないで欲しいなとも思う。


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