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「フランス絵画の精華ー大様式の形成と変容」展@大阪市立美術館

コロナの影響で美術展がことごとく延期になっていたため、しばらく美術館に行けていませんでしたが、6月に入りようやく再開しましたので休日を使い行ってきました。(土曜日が出勤日なため)平日に休みがあるとこういう混み合う場所に行きたい時に便利です。

今回は大阪市立美術館で開催されている「フランス絵画の精華」展に行ってきました。最後にゴッホ展(兵庫県立美術館)に行ってから実に3ヶ月以上ぶりの美術館にテンションが上がりました。

本展はフランス美術の流れを追いながら美術様式の変遷を見ることができます。サブタイトルにもなっている「大様式」とは、ルイ14世が大王と呼ばれていたことに由来し、彼が築き上げた豪華絢爛な貴族文化を反映した美術様式を言います。そこからロココ美術、新古典主義、さらに印象派の誕生前夜までのおよそ300年に渡るフランス絵画の隆盛を追うことができます。

今回はその見どころと感想を簡単に紹介したいと思います。

大様式の形成

先述した通り大様式はルイ14世(1638~1715)の治世に発展した貴族文化を反映した美術様式を言います(と音声ガイドで言ってました笑)。歴史に詳しくない人でもルイ14世という名前は聞いたことがあると思います。「朕は国家なり」という言葉でも有名で、ベルサイユ宮殿を造らせた王様でも知られています。後にルイ14世に影響された王侯貴族によってロココ様式という貴族文化が生まれるほど影響力のあった王様でした。

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『ルイ14世の肖像』(リゴー, 1701, ルーブル美術館蔵)

本展でも入場と共に大きく荘厳な絵画が並んでおり、「貴族の屋敷の廊下」の様な雰囲気があります。この時代の絵画はルネサンスの影響がしっかり出ており、ギリシャ神話をテーマにした絵やキリスト教の宗教が多く存在します。また、非常に写実的な風景画や肖像画も多く飾られており、当時の風景や衣装などを見ることができて面白いです。

ロココ様式

少し時代が下り、絵画の流行は貴族の生活を描くロココ様式へと移ります。(主観ですが)美術史ではあまり取り上げられない印象のロココ美術がこれでもかと展示されている空間はなんとも荘厳な雰囲気がありました。平日で人が少なく(コロナ対策で)私語厳禁というのもあったかもしれませんが。

少し美術史をかじっている人であればわかるかもしれませんが、ロココの絵は見ただけでロココと分かります。印象派の絵が見ただけで印象派だとわかる感じです。特徴としては華やかで明るい貴族の生活が描かれているところだと思います。また、この頃貴族の女性が個人でサロンを開いて美術を発展させたという背景もあり、女性貴族の肖像画が多く残されています。「〇〇公爵夫人の肖像画」が多いのもそれに起因します。

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『ブランコ』(フラゴナール, 1767, ウォレス・コレクション)
ロココ絵画の代表作

本展の目玉でもある3枚の絵画も全て女性貴族の肖像画で、写真撮影もOKでした。残念ながら内一枚は延期の影響で既に展示が終了していましたが……。

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『ユスーポフ男爵夫人』(エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン, 1783, 国立西洋美術館)

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『ポリニャック公爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン』 (エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン, 1782, ヴェルサイユ宮殿美術館)

ルネサンス以降の肖像画を見ていつも思うのは、衣服の質感の凄さです。見ただけで「触り心地」が想像できます。特に貴族の肖像画に見られるのですが、シルクや毛皮のツルツル感やフワフワ感、絨毯や椅子のフカフカ感が伝わってきます。その様なところに目を向けて見てみるのも絵画鑑賞の面白さです。

ナポレオンの遺産

フランス貴族の時代はフランス革命を持って終了し、血生臭い期間を経てナポレオンの時代へと入っていきます。この時代にフランスで最も有名な画家はジャック=ルイ・ダヴィッドと言って間違い無いでしょう。ナポレオンの肖像画で有名な人です。本展ではそのダヴィッドの弟子たちによる絵画が多く飾られています。

『ジョセフ・ボナパルトの肖像』(ロベール・ルフェーブル, 1811年頃)なんかがすごく分かりやすくナポレオン時代を垣間見ることができます。フランスの君主の肖像画なのにマントにユリの紋章ではなくミツバチの紋章が刺繍されているのに歴史の趣を感じますね。

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『ジョゼフ・ボナパルトの肖像』(ルフェーブル, 1811, 東京富士美術館)

絵の色調もロココ時代の様な明るい絵ばかりではなく、少し影を感じる暗い絵が見られます。真偽はわかりませんが、フランス革命やロベスピエールの独裁という暗い時代を経ることで作品の色調にも変化が見られるのかもしれません。

そしてルネサンスから続く写実的で荘厳な絵画に終止符を打つ様に、エドゥアール・マネの『散歩』(1880年頃)で締め括られます。

まとめ

総括すると非常に見応えのある特別展だっと思います。ロココは個人的にもあまり馴染みのない作風だったため、非常に良い勉強になりました。見ただけでロココとわかる様になってきたのは、それなりに絵画に詳しくなってきているのだと実感できたのも嬉しかったです。

余談ではありますが、お土産コーナーに売っていた紅茶の缶が本当に可愛いものばかりで、つい二種類買ってしまいました。たまたま横で選んでいた女性2人も「欲しい缶の色と飲みたい味が違っていて選べない」と話しており、非常に同感でした。

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まだまだコロナに予断を許しませんが、しっかりを対策をされた上で、時間を見つけて行かれることをお勧めします。マスクの着用と検温、館内の会話禁止が必須となっておりますのでお忘れなく。

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