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東洋哲学に目を向ける

私が受けていた大学の哲学や倫理の授業では西洋哲学が中心でした。担当していた教授は、マイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』をベースに授業構成をされていました。

ベンサムやミルの功利主義や、カント主義、ギリシア哲学などが扱われ、高校を卒業したばかりの私には新鮮でした。どの人物や思想も世界史の授業のなかで名前だけが扱われ、その実を待つ全く知らなかったので、なるほどこんな事を当時の人は考えていたのかと感心しました。

それから個人的に哲学を扱った本を読んだのですが、やはり西洋哲学が中心で、心のどこかで哲学といえば西洋と思っていたのだと思います。

しかしここ最近マインドフルネスや瞑想という語をよく耳にするように、東洋思想や東洋哲学がビジネスで見直されるようになってきています。スティーブ・ジョブズが禅の思想を大切にしていたという話も有名ですね。

興味はあったのでいつか東洋思想や仏教の考え方を勉強しようと思っていたのですが中々踏み切らずにいました。

しかし先日『PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』(2019, 文響社)という本を読んでいた時に非常に分かりやすく仏教の考えを説明していた部分がありましたので引用します。

中道のイメージをつかむには自分の中に人が2人いると考えてみればいい。
1人は官僚、もう1人は自由な精神のアーティストだ。官僚は時間通りに起きる。払うべきものを払う、良い成績を取るなど、物事をきちんとやるのが仕事で、安定や規則を好み効率や成果に価値を置く。対して自由な精神のアーティストは、深いところでつながり、生きている喜びや愛、冒険、のびのびとした活力、創造性気持ちを大切にする。我々が気づかぬうちにどっぷりつかっている習慣や期待という海を突き抜け、その先に行こうとするのだ。
これはいずれも極端なあり方であり、どちらを選んでもうまくいかないと言うのが中道の考え方だ。機能や蓄積、成果ばかりを追い求めると、そのうち、自分は本当に生きているのだろうかと疑問を覚えたりする。逆に、情熱のまま自由に生きると、そのうち失速したり、支えるものがなくなって辛い思いをしたりする。だから、どちらにもかたよらず、両者の折り合いをうまくつける中道が1番いいというわけだ。そうすれば、現実を無視することなく、前向きな本質や精神、人間性を活用できる。ただし、そのためには、今我々が当然のこととして従っている慣習や因習を乗り越える勇気が必要になる。
(ローレンス・レビー, 井口耕二訳, 2019.『PIXAR<ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』文響社)

これは作者がPIXARを退任した後の話である最終章に書かれていたのですが、何故かここが最も心に残りました。

それまで延々とPIXARという会社がいかにして成功したかという裏側の話が書かれており、その話自体もとても面白かったのですが、まさか最後に東洋哲学の話になるとは思っていませんでした。

しかし本当の最後の最後で、作者がPIXERという会社の文化が中道の考え方そのものだという事に気づくシーンがあり、そこまで読んでいた私も納得させられます。なるほど、最後に東洋哲学の話を持ち出したのはそういうことだったのかと。

これまでにSTEAM教育やアート(クリエイティブ)教育などに興味を持ち、次の時代の教育を模索しようと勉強してきましたが、そのヒントがこの東洋思想にあるような気がしました。もちろん教育だけでなく仕事や私生活にも役立つと思われます。

まさか企業とお金の本を読んでいて影響されたのが哲学の話になるとは思いませんでしたが、これを機に今後勉強していこうと思います。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 https://www.amazon.co.jp/dp/4866511133/ref=cm_sw_r_cp_api_i_s7aOEbBCMY00Y


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