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Depressive Silence - Ⅲ Mourning

Depressive SilenceはドイツのRALとB.S.なる人物から1994年に結成されたダンジョンシンセ・プロジェクトによる3枚目の作品です。(オリジナル盤は"Ⅱ"というタイトルが使われている為、当時は2枚目という扱いだったのかもしれない)彼らの作品はEPのみでアルバムとしてリリースしているものはないのですが、その中でもカルト的に名盤とされているのがこの作品です。(サブスクで聴けるのも何故かこれだけ)

ダンジョンシンセ……かなりニッチなジャンルではありますがじわじわと知名度をあげているマニアには知る人ぞ知る音楽ジャンルで、雰囲気や思想はブラック・メタルやペイガン/フォーク/ヴァイキング・メタルに近いのですがあくまでもそれはほぼ視覚的な要素のみで中世を思わせるファンタジーものがベースとなっています。アートワークはモノクロを基調として霧がかかった古城や森、自然をテーマにしたものが多くアーティスト自身もローブに身を包みフードを被って素顔を隠していたりするのも特徴のひとつですね。
実際の音楽はチープなキーボード・サウンドや環境音がメインでまさにロール・プレイング・ゲームで流れている暗い洞窟を歩き続けているかのようなダンジョンでのBGMをそのまま表現したかのような音楽になっております。

このジャンルの先駆者といわれているのはBURZUMJim KarkwoodMortiisとされていて、当時はまだダンジョンシンセとは呼ばれておらず後にMortiisによるレーベルDark Dungeon Musicにちなんで名付けられたとされています。
一部のブラック・メタルファンだけではなくRPGを好む人々にもアピールした新しいスタイルは今やダーク・アンビエントと一括りにするのには狭く、独立した音楽ジャンルとして知れ渡ってきました。

そしてこのDepressive Silenceもダンジョンシンセの中枢を担うアーティストのひとつです。
#01 Forest of Eternityはおそらく彼らで一番有名な楽曲のひとつでまさに永遠に続く神聖な森の中を彷徨い続けているかのような一曲。ドラム…ではなくおそらくティンパニで段々と盛り上がりを見せてくる展開はただのダーク・アンビエントでは終わらないのも特徴的です。
作品によってはブラック・メタルで聴けるよう唸るようなヴォーカルが入っていたりしますが、本作ではほぼ全編インストで聴きやすいです。

このジャンルはソロで活動しているアーティストが殆どでライブには消極的なイメージなのですが、彼らは割と精力的でファンが撮影した最近のライブ映像もいくつか残っており、ライブではおそらくサポートと思われるメンバーを加えたバンドセットでキーボードやティンパニの他、語りのようなヴォーカルも入れていたりライブ・アレンジも多彩であくまでもアンビエント・ミュージックがベースになっているはずなのにファンが拳を突き上げる姿がちらほらと見られ独特な盛り上がり方をしているのもなかなか興味深く面白いです。

垣根こそ違いますが個人的にはクラブ・ミュージック界隈から出現したヴェイパーウェイヴハイパーポップのように音楽好きには刺さるカルト的ブームになりそうな気配とにおいがプンプンするジャンルだと思っております。(既になっているのかも?)
激しい音楽に少し疲れてしまったメタラーからアンビエント、ゲーム音楽好きまで幅広くオススメします!

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