Chat Pile - Cool World
アメリカはオクラホマ州の4人組スラッジ/ノイズ・ロックバンドの2枚目。バンド名の由来はオクラホマ州にある有毒廃棄物の山の名からとられたという。オクラホマ州は天然ガス、石油、農業の生産性が高く、バイオテクノロジーに経済の基盤がある。紛れもなく彼らが過ごしてきたであろう環境が音楽に与えている影響は大きく、それは工場で聴こえてくる機械音のようにジャンクなものだ。1stアルバムは故スティーヴ・アルビニ氏がプロデュースし、音楽メディアでも軒並み評価されてきた。前作はスラッジ・メタルのThou、あるいはDaughtersのようなノイズ・ロック、そしてJesus Lizardのようなポスト・ハードコアのような雰囲気をも孕んでいたが、今作ではポスト・パンクをも吸収して緊張感をも漂わせ正統的な進化を遂げているといえるだろう。
彼らが奏でるサウンドはスロウではあるが、ドゥーム・メタルとはまた違うグランジに近い形のヘヴィさで終始血生臭さを纏っている。実際ノンフィクション(実際起こった殺人事件など)をテーマにしている歌詞の内容をドキュメンタリー映画のように変換して語り、かき鳴らされており、これは前作の『God's Country(2022)』の続きでもあり、彼らが手がけたインディー映画のサウンド・トラック『Tenkiller(2022)』でみられるような暴力的な表現が音に乗せられている。そういった怒りや虚しさは彼らの中で変わらず一貫して作品に散りばめられてその怒りとともに警告として訴えられている。それが止む気配は彼らが解散するまで一切ないだろう。そういった表現が自由な場でのChat Pileの音楽というのは非常に分かりやすく、この世界で今も起こり続ける産業環境から迫りくる危機感を繰り返し叫ぶ歌詞の中でシンプルに我々に語りかけているのだ。