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20代で死ななかった

子どもの頃からいつも、家にいても家に帰りたかったし、誰かといたら落ち着かなくて楽しいのに早く帰りたかったタイプの人間でした。

学校を卒業してもこの性格は変えられなくて、社会人をやるにはとても息がしにくいけど働かない選択肢はなかったので本当に嫌々だけど、私なりの希望とか目標を掲げて、嫌々ながら人間生活を営んでいたので20代で死ぬと思ってた。

帰りたいと思ってたけど心安らぐ場所は与えられなかった子どもだった。
辛いブラック企業生活だったけど、自分で働いた賃金で手に入れた4畳半のワンルームの静寂さにやっと安心できてひとりで泣いたのを覚えている。繊細でとても傷つきやすい子どもだったから集団生活はいつも落ち着かなかった。

「もう人間と生きていくのは嫌だから、山の中で犬と暮らしたい」と、こぼしたこともある。

世間に馴染めない。理不尽なことに遭遇してそれをうまく受け流せるほど器用なことが出来ない。
現実や人間に絶望して、恋人や友人に裏切られて泣いて、崩壊した家族神話に泣いて、死んだ父を思い出して泣く。
10代20代の夜は静かに泣いてた時間が多かった。
誰かの前で泣けるほどの器用さが欲しかった。
何も器用にできないから、努力したけどそれも報われない。
自殺した近代の文豪たちに思いを馳せながら、私も20代のどこかで死ぬんだろうなぁと薄ぼんやり考えていた。

どう見たって世界は汚くて、綺麗なものはフィクションにしかないと思ってた。変に潔癖だったから、汚いものをうまく受け止められない。お酒にもタバコにもハマれなかった。ギャルにもなれなかったし、ヤンキーにもなれなかった。

ただぼんやりしてた。
着飾ることも、自分をラベリングすることもできなかった。何者にもなれないし、変わってると言われることが嫌いだった。周りに上手く助けを求められなくて、人と衝突して、誰かを傷つけた。

死にたいと思う日の方が多かった。
それでも人並みに生きる希望を探すために色々なものに手を出して、本を読んで書いてインターネットで遊んでたら20代が終わった。

生き延びたよ。
死ななかったね。

それに怖いものも減って、経験値のおかげで上手くやれることも増えてきたよ。
夜に泣くことは無くなったし、そもそも泣かなくなった。
地位も名誉も貯金も何にもないし、子どもみたいな性格も変えられなかった。いつも帰りたい気持ちも変わらない。それでも世界に絶望せず、ぎりぎりのところで生き延びた自分を褒めてあげたい。

サキチャン生きててよかったね!
多分これからも人並みに辛いことが起きて、その度に絶望して、また夜に泣いて過ごす日が来るかもしれないね。それでもまた、騙し騙しやって生きていこうね。

負けず嫌いで、遺された人の痛みを知ってて、痛いのが怖いサキチャンが自殺なんて恐ろしいことができないもんね。それでもよくある不幸が辛すぎて、生きていたくなかったよね。それを受け止めて生活ができるようになるまで、随分時間がかかったね。

のんびりしてるからいつも周りからは遅れちゃうけど、それも悪くないって思えるようになったよ。
世界は汚いだけじゃないもんね。
きっとそう。多分ね。

今の家は安らげる場所だから、多分大丈夫。帰れる場所を手に入れたよ。
きっとこれは、生き延びた私への神さまからの贈り物なのかもしれないって少し思った。

私は生きてるだけで良いんだって。
親から貰えなかったものが形を変えて、他の誰かにもらえることがあるなんて不思議だなあ。

どうかこれからもよろしくね。

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