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ナカタニエイト短編小説集

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ちょっとした空き時間に3分程度で読める短編小説・ショートショート+@をまとめています。皆様にとって、ちょっとした息抜きにでもなっていただければ幸いです。
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2020年6月の記事一覧

目糞、鼻糞を笑う事勿れ:ショートショート

「目糞、鼻糞を笑うってあるじゃない」 「どうした。藪から棒に」 「いやね、目糞が鼻糞笑う姿をリアルに想像してほしいのですよ」 「できねぇよ、そんなもん」 「目糞というくらいだから、目にある訳じゃない」 「まぁ、目の付近にあるわな」 「それでさ、鼻糞というものは、その名の通り鼻にあるじゃない」 「まぁ、鼻の中にあるわな。たまに飛び出してる人とかいるけど」 「目糞って、そこまで大きくない訳じゃない」 「まぁ、大きい目糞付いてたら嫌だわな」 「だからさ、その大きくもないサイズのもの

Thanks, My Brava:ショートショート

あの日、私は音が聞こえなくなる瞬間を、聞いた。 その時、彼女はそこに立ち尽くしていた。 3-2と一点を追いかける状況に彼女たちは挑んでいた。アディショナルタイムはもう残り僅か。 縦一線。針の糸を通すかのようなここしかないという正確なパスが通る。おそらく練習では一度も成功したことがないようなパスだっただろう。それくらいにそこしかないという芸術的と評すに相応しいパスだった。 彼女は前を向いた状態でそのパスを見事に受ける。 彼女のチーム全体が高い集中力を示していた。ゾーンと言わ