見出し画像

地域と人をつないで 静かなブーム  映画「にしきたショパン」

西宮北口を舞台に、ピアニストを目指して試練に向き合う若い二人の姿を描く映画作品「にしきたショパン」が静かなブームを呼んでいます。地域社会の活性化という役割も担う作品を世に送り出したプロデューサーの近藤修平(こんどう・しゅうへい)さんは、元大阪ガス社員、オペラ歌手、喫茶店のオーナーという異色の経歴の持ち主です。近藤さんに作品に注いだ思いを聞きました。                   【聞き手・中尾卓司】

高校時代教会二人

——「にしきたショパン」には、どんな反響がありましたか。
撮影地の西宮市を中心とした京阪神地区、また上映された東京や博多などでも少しずつ、いい評判が広がっています。美しい映像と音楽を楽しんでもらえる上質な作品に仕上がりました。
「作品から勇気をもらった」、「ジストニアという病気に光を当ててくれて、ありがとう」といった反響もありました。             「6回見たよ」という人もいます。

——この作品のテーマをお話しください。
阪神大震災の記憶を語り継ぐことと、左手のピアニストを応援すること。二つのテーマが重なっています。
難病である局所性ジストニアなどのために片方の手で演奏する「左手のピアニスト」を知って感銘を受け、左手のピアニストを応援したいと考えてきました。
コロナ禍で劇場公開は1年遅れましたが、阪神大震災25年の節目に当たる2020年の公開を目標にしていました。若い世代は、1995年に発生した阪神大震災を経験していません。思いがけない試練に直面したときに、人は、どう生きるのか、と問いかけています。

——竹本祥乃(たけもと・よしの)監督とは、どのように会われましたか。
竹本監督は、理化学研究所(神戸市)の研究技術員として働きながら、週末映画監督として20作品ほどの短編作品などを撮影し、国内外での映画祭で高く評価されています。竹本監督と知り合ったのは、2017年秋です。私がオーナーを務める阪急仁川駅前の喫茶ハッセルハウスで、短編作品「アルカディア」を撮影されました。
竹本監督が撮りためた短編作品を見ると、独特の個性が光っています。
映像の行間を楽しめる間(ま)がある。見る側に考える余地を残す。過剰な演出で説明しすぎない。感性を揺さぶる作品を撮る魅力を感じました。
映画らしい映画作品を撮るこの人を応援したいと思いました。
竹本監督にとって、初めての長編監督作品となりました。

——自主製作映画として気に入った点と苦労された経過を教えてください。
竹本監督らしさが表現できたと考えています。映画にふさわしい間(ま)があって、心にしみる作品が完成したことを喜んでいます。
ロケ地とキャストの選定は、大変でした。シナリオが固まっても直前までロケの場所が決まらないことが少なくありませんでした。
県立西宮高校の撮影では、公立高校を2日間、借りることは簡単ではありませんでした。
コンサートの場面の撮影には、300人のエキストラの協力を得ました。
私の音楽家の仲間やロータリークラブの仲間、会場となった神戸女学院大学のOGや関係者、クラウドファンディングに参加した人たち……。撮影は、多くの人に支えられました。

登場人物のキャスティングにも苦心しました。
主人公の水田汐音(みずた・しおね)さんは、撮影した2019年の時点で現役の西宮高校生であり、コンサート入賞実績も多い実力派のピアニストです。
もう一人の中村拳司(なかむら・けんじ)君は、将来有望な若手俳優です。
奇跡的な偶然の出会いが重なって、作品が完成しました。
水田さんも、中村君も、この出演が飛躍の足掛かりとなりました。

——これから作品を見る人に向けて、メッセージをお願いします。
試練に遭ったとき、人はどう生きるのか、というテーマに迫っています。魂に響く音を探す若い二人の姿を見て、生き方を考えるきっかけにしてほしいと願います。作品は、そのテーマにふさわしい音楽に包まれています。

高校時代二人夙川公園②

【上映情報】
~5月20日まで
シネ・ピピア(宝塚市)でアンコール上映中。
OSシネマズ神戸ハーバーランドで上映中。
~5月21日以降~
上映情報は、「にしきたショパン」公式ホームページに順次掲載されます。
https://office-hassel.com/n-chopin/