見出し画像

MMTにおける「税が貨幣を動かす」ビューの論理(レイ本の第7章)V

レイ『現代貨幣を理解する:完全雇用と物価安定への鍵』(Understanding Modern Money: The Key to Full Employment and Price Stability)2006年版における、第七章「税が貨幣を動かす」ビューの論理(The Logic of Taxes-Drive-Money View )の個所のゲリラ訳と解題、その五回目。

 この話だけのマガジンとしてもまとめています。

 ここまで
 第一回でこの章の、第1節から第6節の冒頭を、
 第二回は「銀行の発達」と題された第6節だけを徹底的に読み、
 第三回は、このモデルにおける「準備金」という言葉について注意を促し、
 第四回は、債務ピラミッドの概念を図で説明し、金利の決定メカニズムに触れました。

  今回は、次の第7節の前半をお見せします。

 実にサラッとしています。

 ワタクシの note を読みに来るくらいのあなたであれば「知っているよ、それ」という人も多かろうと思います。

 しかしです。
 
 これは前回紹介したミンスキー(レイの先生)には決して書くことができなかった記述です。

 ミンスキー(1919-1996)と言えば、その債務ピラミッドの概念、Lender of Last Resort (最後の貸し手政策)や、さらには JGP(職業保証プログラム)と同じものとさえ言われる ELR、Employer of Last Resort(最後の雇用者政策)の提案にまでたどり着いていた人。

 そして2007年の世界金融危機の後、その原因を訴えていた人として再評価されています。

 けれど、ミンスキーにはこの第7節は書けなかったはずです。

 世界金融危機の後、ミンスキーの理論をめぐる論文や書籍もたくさん出ましたが、そうした人たちにも書けなかったはずです。

世界金融危機と経済学者

 経済学と世界金融危機と言えば、なんといっても2022年のノーベル賞の三人が挙げられます。

 たとえばこの記事を見てください。

 世界金融危機は、前回説明した銀行の資金調達をめぐる問題だったことは読み取れると思います。

 ノーベル賞の授賞者の彼らも、これは書けないとワタクシ思います。

 ワタクシはそれを深刻なことと思っていて、同時に経済学者って馬鹿だなあ、穴掘って埋められても仕方がない連中だとひそかに思うんですよね。

 実はワタクシの義兄は経済学者です。
 知的で心優しい兄貴分。

 ワタクシの年老いた両親の近くに住んでいて、姉と共にその介助に関わってくださっている。

 その一方で、やはり経済学者である以上、ワタクシは彼を許すことはできない。

 ワタクシが何を言いたいかの種明かしは次回。

 ではまいりましょう。

準備金と中央銀行(RESERVES AND CENTRAL BANKING)

[段落1]

 銀行間の準備金は家計間の口座の決済によって水平移動はするが、準備金全体の総量は変わらない。しかし、家計によって小切手や預金を不換紙幣ドルに置き換えて納税がなされると、準備金はその都度銀行システムにおいて清算され、流出する(訳注:納税があると準備金の総量が減少する)。民間の銀行システムそれ自体では、準備金全体の利用可能性(abailability)に影響を与えることはできない。整理すると、準備金全体の量は、政府が提供する不換紙幣の量、納税によるその減少、家計が貯め込むドルの量、不換紙幣の紛失または破壊される量によって決まる。政府から準備金が提供されるパターンとしては、政府による銀行システムからの債券の購入、銀行への準備金の貸付という直接的な供給のほかに、政府が家計から商品やサービスを購入する場合と、政府が家計から債券を購入するという間接的供給がある(間接的供給であっても、納税義務を果たすために当面必要なドルと、ドルのままで持っていたい分を超えるドルは、家計から銀行システム内の利子付の預金口座へ流入した状態になるため)。一方、ドル(紙幣または銀行準備金のいずれか)が減少するのは、税の支払いまたは国債の売却を通じてだ。

 いつものように図にしましょうか。

 レイのこの記述とこの図が合致していることを確認しましょう。

図1:MMT的な現実の描像

 民間部門内の銀行部門にある準備金を、左の緑で表しています。
 右のピンクは、民家部門内にある利付のマネーで国債はこちらに入ります。

 注目しているのは左の緑、「銀行部門の準備金」。
 ここはどのようなときに増え、どのようなときに減るか。

 政府が提供する不換紙幣の量、納税によるその減少、家計が貯め込むドルの量、不換紙幣の紛失または破壊される量によって決まる。

 これを整理すると、銀行の準備金量が増加するパターンは4つ。

準備金増加の4パターン
 (直接)
(増)-1
 政府による銀行システムからの債券の購入
(増)-2 政府による銀行への準備金の貸付

 (間接)
(増)-3
 政府による家計からの商品やサービスの購入
(増)- 4 政府による家計から債券(国債を含む)の購入

 反対に、銀行の準備金量が減少するパターンは2つ。

準備金増加の2パターン
(減)-1
 税の支払い
(減)-2 国債の売却

 おしまい。
 これらはすべて上の図が包含しています。

 だから何?という声が聞こえてきそうです。

 でもですよ。
 この整理によって経済学は倒れています。

 だからミンスキーはMMTに到達していない。
 皆さんもすぐにはわからないと思いますが、、、

ミンスキー(や皆さんの)経済学者的な世界の描像

 ミンスキーは、財政政策と金融政策を分けて考えていたと思います。
 金融政策から行きましょう。

ミンスキー(や皆さん)の金融政策の描像

 ミンスキー(や皆さん)はじめ経済学者はおおむね次のように金融政策を把握しています。

図2.ミンスキー(や皆さん)や経済学者の金融政策像

 金融政策のツールは、公開市場操作(国債の売買)、窓口融資からの銀行への貸し付けだけです。
 (驚いたことに最近は株や土地も買うようですが)

 債券購入としては国債以外に、銀行の持つ不良債権を買うこともできてしまうので赤矢印で書いています。
 それは金融危機の時にバーナンキがやった政策。

 流動性供給\(^o^)/
 不良債権を買うしかない\(^o^)/

 あほかいな。

 財政政策はどうでしょうか。

ミンスキー(や皆さん)の財政政策の描像

 ミンスキーや、みなさんや経済学者の財政政策象は、こんな感じだと思います。

 Gは財政支出、Tは徴税。
 財政赤字分は、赤字国債を発行して政府預金を補充します。

図3.ミンスキー(や皆さん)や経済学者の財政政策像

そこまで経済学者は馬鹿なのかどうか?

 今回は、読者の皆さんに挑戦です。

 ワタクシがバーナンキはもちろん、心優しい義兄を含めた経済学者の全員を馬鹿だと思い、穴掘って埋められても仕方がないとまで考えている理由を、ワタクシは高校二年生程度の知識レベルがある方には説明できると思っています。

 条件は、五回に渡ったこのシリーズの内容を理解できてくださっていること、それだけです。

 もう図は描けています。
 と言うか、今回の図だけで十分なんです。

 みなさん、これでわかりますか?

 ワタクシが怒っているのは、この英語が下手で頭が悪い一人の雑魚御用学者に対してだけじゃないんですよ。

 こんなのかわいいもの\(^o^)/
 
 それを次回、論じましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?