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2023.1〜3月採用歌

でも恋と怒りはきっとよく似てて割れた硝子に火をつけたよう
 2023/01/14 文芸選評 野口あや子
 「でも」からはじまる歌

沈黙はひとりでいても心地よく雪に似たきみの気配があった
 2023/01/22 東京歌壇 東直子
 特選一席

花束を両手に抱え交差点サロメの銀の喪失がある
 2023/01/29 東京歌壇 東直子

真夜中のちいさな灯りで読む本に眠気を少しちぎってあげる
 2023/01/29 東京歌壇 佐佐木幸綱

避妊具を腹に埋め込みたいような膝には猫が眠るまひるま
 2023/01/30 毎日歌壇 水原紫苑

燃えつづく海原がある友だちのきれいに伸びた爪の中にも
 2023/02/05 東京歌壇 東直子

本棚が噴火しそうなはつはるの未読の紙は雪原に似る
 2023/02/05 東京歌壇 佐佐木幸綱

一面を魚のヒレに叩かれてそうだったこれが怒りってこと
 2023/02/19 東京歌壇 東直子

指先に息を宿してからふれる冬の儀式は湖底のかおり
 2023/03/05 東京歌壇 東直子

背を丸め三つ編みを結う指先がふたりの丘に川を生みだす
 2023/03/12 東京歌壇 東直子

傾けば影から夜が生まれでてモナリザは朝も夜もモナリザ
 2023/03/14 毎日歌壇 水原紫苑

映像でひとのかなしみみていればゆで卵なにかはみ出している
 2023/03/26 東京歌壇 東直子
 特選二席

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