まひる野2023.6〜9月号掲載作品

妹は夏の日照りのように立つ指輪をしても同じ名前で

親友のようなブラウス本心を青い釦で隠してくれる

空の写真いちいち撮らなくなっていて同じ時間に同じくちづけ

コミュニケーションってなんだ唇をあわせることがなんで特別

絡まったこころ重たく雪どけの道にブーツが果てまで沈む

2023年6月号


続々と血が抜かれゆく 今日風が強いですねと笑いあう部屋

自分の血、見るの大丈夫ですかって嫌でも見慣れてるね女は

看護師はきゅっとくびれが作られたワンピース着て 広いガラス窓

手術台に乗れば次々声が降りすべてに「はい」と答えて眠る

2023年8月号


夕方の日陰の風よどの土もわたしのものと思って踏んだ

悲劇にも見える更地に手や足を使い間取りを地面に示す

信仰も来世もなくてむき出しの土に湿った草木のにおい

夜にしては白すぎる雲ブリトーをノースリーブで食べにいくとき

逆さまになくなりかけのマヨネーズしまって夜の六時のあかり

2023年9月号


一部掲載

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