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まひる野2023.4月号掲載作品


月の顔

冬ざれのトースター覗き待つあいだ背中が夢を回想しだす

見せたくてきみに写真を撮ったのに目覚めたらまだ回る乾燥機

眉山の毛を抜きながら爪冷えて言われなくても真冬日だろう

古本に染みこむにおい生活の丸ついた歌わたしも好きだな

月の顔に海があるなら吐く息のひとつひとつにカモメを飛ばす

先を行く猫背の影が振り向いて白い喉仏なにかを言った

暗夜 いま母がわたしを産んだころ二十八歳午前二時すぎ

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