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アメ配りキャラでキャンパスライフを乗り切ろうとする奴

「アメ、いりますか?」

入学式後のガイダンスでとなりの席になった彼女は私にこう話しかけてきた。

私は特にアメは好きではないが、せっかく話しかけてくれたので、一つもらって口に入れた。
そして大学の履修のわかりにくさ、今後の不安などについて彼女と話した。
学部のガイダンスの後はそれぞれの学科に分かれてまた説明を聞くので、そこで私は彼女と別れた。

次に彼女に会ったのは、英語の授業の時だった。
数日ぶりに会う私に軽く挨拶してまた一つアメをくれた彼女は、自分の席に戻るととなりの人にアメを渡し、雑談をしていた。

その次に会ったのはまた別の授業の日、彼女は自分のまわりの友人グループにアメを配り、もう私にはアメを渡しにこなかった。

彼女はこのまま卒業式までアメを配り続けるのだろうか。
私は彼女のアメ配り戦略がいつまで通用するのか不安になった。

そこで、私はアメを配ることでコミュニケーションを図る代表的な2組を想像した。
ビッキーズと、キングコング西野である。

ビッキーズは、舞台上でまず客席にアメを投げ入れることで雰囲気をほぐし、漫才をしていた。
そうやって雰囲気作りから始める姿勢を評価されてか、ビッキーズには主に番組の前説の仕事がよく入り、「ビッキーズ飴」というグッズも発売された。

しかしビッキーズは後に解散し、ツッコミの木部は芸人を引退して焼肉たむらの社員になった。
現在では木部はおそらくアメではなく食後のガムを配っていることだろう。

もう1人がキングコング西野だ。
西野は、アンチからの挑発に乗って芸人を引退し、パインアメ特命配布主任として活動していたことがある。
常にパインアメを持ち歩いて、チケット手売り購入者にパインアメを配っていた。

しかし、最近になって西野からパインアメをもらった人はいるだろうか。
彼はいつの間にかパインアメを配ることをやめてしまった。
クラウドファンディングのリターンに「西野があなたを意識する権」はあっても「西野があなたにパインアメを配る権」はない。
西野にはウォルトディズニーを超えて街をつくるという夢があるが、その街でパインアメが配られることはないだろう。

このように、アメを配るコミュニケーションはそう長く続けられるものではない。
アメをもらって全員が喜ぶわけではないし、授業中にアメを舐めていると怒られる。

例にもれず彼女もいつしかアメを持ちあるのをやめ、卒業式でアメが配られることはなかった。
でもそれでいいんだと思う。
出会いは甘くとも、別れは苦いものだから、卒業式にアメは合わない。

でも卒業祝いにもらう紅白饅頭ってめっちゃ甘いよね。

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