Apple SiliconとIntel

WWDC 20で、MacのプロセッサがApple Siliconへ移行されるという話題が出た後、新しいMacの話題が出るたびにIntel最後のMacという表現がなされます。例えば、8月5日にリリースされたiMac 2020 27インチモデルについて、いくつかのメディアは「最後のIntel iMac」というふうに表現しました。個人的にはこれは断定すべきものではないと見ています。

Appleは、Apple Siliconの移行について「2年間」の移行期間を宣言しました。これは、ある瞬間から急にすべてのMacをApple Siliconに置き換えるのではなく、徐々に移行していくということを示しています。約14年前、PowerPCからIntelに移行したとき。当時はIntelのPC市場での威力や功績自体が世の中に知れ渡った状態、いわば、満身創痍の状態で移行することが明らかにされました。何が言いたいかというと、Appleは現状、PC市場においては、Apple Siliconの実績がなく、このことがある種の不安要素であるということです。

確かに、iPhoneに初めて採用されたAppleが開発したシリコンは、ここ5年間ほどの間に大きく進化しました。それはIntel CPUを凌ぐ勢いであり、Appleが自社製品すべてにApple Siliconを搭載し、エコシステムを形成するということ自体は、不思議なことではありません。Apple Siliconは自他ともに認める優良なシリコンです。しかしそれはあくまでもiPhoneやiPad上での話。Macでは比べられないほど多くの課題を残しているような気がします。

Intel CPUを凌ぐ勢いとは言うものの、Intel CPUがこれまでMacで活躍していたというのは、着実な進化があったからであり、ワークステーションやPCという分野については、実績も信頼もあります。AppleのIntelから離れるという行為については、かなり勇気のある行動であったのは間違いありません。もしかしたらこれによって開発者が離れていくかもしれない。そして、コンシューマが満足しないかもしれない。確かに、Rosettaなどのシステムによって、互換性は保たれてはいますが、やはりネイティブとバーチャルは異なります。

Apple Siliconについて、現在はDTKと呼ばれる、Apple Silicon Macのサンプルが開発者に配布されているものの、正規の製品ではなく、Appleの発表を見る限りでは「Apple A12Z Bionic」と実際にMacに搭載される「Apple Silicon」には仕様的に差異があるようなので、現状の情報だけでは測れない部分があります。例えば、ビデオエンコーダがSoCに統合されていたり、メモリの管理機能がApple初の取り組みであったり。

Appleの「2年」という移行期間は、ある種、一発でプラットフォームを変えることに対する保険のように見えます。言ってしまえば、Apple Siliconに移行した後の売上や移行の進捗を見る「試験運用期間」というわけです。移行発表後もIntel Macをリリースし続け、Intel Macの持続的なサポートを並行して行うことを明らかにしたのも、IntelをApple Siliconが躓いたときのバックアップにしているのではないかということです。

最近、AppleはIntelを見限ったというふうに報じているメディアがあります。これは、Intelの元社員が話したものをソースにしているので、Skylakeのできが悪かったというのが、Apple Siliconへの移行の理由であるとされています。確かに、Skylakeの出来はさんざんだったかもしれません。しかし、私はAppleとIntelは今後も協力関係にあり続けると期待しています。この両者の関係が、そう簡単に切れる縁ではないと思うからです。現在もIntelとAppleは、Thunderboltの開発という部分において協力関係であり、AppleはApple Silicon MacでもThunderboltのサポートを継続するとしていることから、この関係は続きそうです。

また、Apple Siliconへの移行期間は、売上を判断する試験期間だということをお話しましたが、実際Appleは、Apple Siliconに移行するいう決断をし、それを開発者に発表した時点で、かなりの自信を持っているはずです。相当なことがない限り躓かないでしょう。

私は、Apple Silicon Macについてはどちらかというと期待している人間の一人なので、今後の情報を待ちたいと思います。

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錦 aka NKIIB (nishikiout)
Nishiki-Hubの管理人兼ライターです。学生という機動力と、弱小ながら読者を大事にしたいというポリシーを掲げています。noteでは、失敗談とか、裏話とか、雑談とかしていきます。