「Winny」を観て、いろいろ感じた考えた。

映画「Winny」鑑賞。

最近は大スペクタルか超美アニメを観るくらいしか映画館には行かないのだけれど、一応かつてネット業界の端っこに身を置いた者として、とりあえずこれは観ておかなくちゃと思い、久しぶりにTOHO新宿館へ(近場の映画館は本数が少なくて時間帯が限られていたのよね)。

2時間超の作品なので途中でダレないか、集中力が切れてしまうのではないか、と心配したが、全然そんなことはなくて、自分でも驚くほどドラマにのめり込むことができた。

知らない人のためにざっくり説明すると、「Winny」というファイル交換ソフトを開発したことで著作権法違反幇助の罪に問われた金子勇という天才プログラマーの法廷劇。つまりドキュメンタリー・タッチのドラマです。

Winnyは、P2P(ペアトゥーペア)技術の魁といえるソフトで、仲介役のサーバーを通さず、クライアント端末同時で自由にデータやファイルをやり取りできるというプログラム。サーバーがないのでアクセスが集中してシステムダウン、てなことは起きないし、利用者の匿名性が強固に担保される。

昨今話題のプロックチェーンや、災害時の緊急通信システムなど、いまやざまざまな分野で応用が広がっている。

それほど未来性にあふれる技術を、当時の日本の警察や司法、マスコミ、世間はなぜ封殺しようとしたのか。

映画でも紹介されていたが。いわばナイフの殺傷事件で、ナイフ職人を逮捕したようなもの。ネットに引き寄せて言うなら、ユーチューブに違法コンテンツがアップロードされた際、ユーチューブの社長を逮捕したようなものである。いかに頓珍漢な愚挙であるかがわかる。

あのとき、他所の国だったら、Winnyに対して巨額のベンチャー資金や大物の協力者が集まったり、優秀な人材がじゃんじゃん採用できたのかもしれない。

その結果、多くの特許や先端技術が日本に蓄積できたかもしれない。金子氏の約8年間に渡る法廷闘争は全くの才能の無駄遣いであり、金銭に換算しても相当な逸失利益を日本に被らせたのではないか。

あのとき、金子氏を逮捕、有罪にし、あるいは煽り立てたマスコミや関係者は国家百年の計を誤らせたことになり、まさに逆賊、その罪は万死に値すると思う。

まぁIT業界に限らず、無知、無理解、あるいは嫉みややっかみにより、能力ある人材を引きずり下ろすことはこの国では屡々あると感じている。

IT業界に限っていっても、世界初のCPUをインテルと共同開発した嶋正利氏や、超先進的なリアルタイムOS、TRONを開発した坂村健氏など、すんなりいけばコンピュータサイエンス史に燦然と輝くはずの、ノーベル賞級の天才は数多くいた。

でも彼らは知る人ぞ知る存在であり、一般的に脚光を浴びることはついになかった。なんともももったいなかったな、と思うし、今もどこかで、周囲の理解や協力を得られず埋もれてしまう未来の種があるのでないかと危惧してやまない。

ただ映画としては地味な作品なので、客席はガラガラなんじゃないかと危惧していた。けれど、あにはからんや、館内はほぼ満席だった(*_*)。これは他人事ながら嬉しかったし、現在の、そして将来の日本への警鐘として、多くの人がこの映画を支持しているからと、ポジティブに受け止めた。

映画の俳優陣は誰もが素晴らしかったけど、個人的には愛媛警察内部の腐敗を暴いた警察官役の吉岡秀隆の熱演ぶりが印象に残った。本筋とはあまり関係ないけど、「北の国から」の純くん、立派になったねぇ(

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しかしよくこの作品が映画化できたかとも思う。いろいろ妨害もあったのではないか。関係者の勇気と行動力に改めて敬意と謝意を評します。

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