【血の粥】上空から現われた大動物(2)
コバートがすぐにその存在に気づけなかったのは、影がひざ丈の草原に落ちなかったせいだった。〇・〇秒一くらいの隙が、致命的な遅延となったのを彼自身も瞬間で痛感。さらに逃げるのか、立ち向かうのか躊躇ったのも傷を広げる理由になった。あまりに大きな害敵に怯えたのは、人間である前に動物の本能だったからだ。エコーもまた次の行動を思考する前に、猟銃を構えるのを忘れた。芸術的なまでに圧倒された。究極的に美しい女を見るのと同じ。つまり恋している女性の瞳にロックオンされたその恍惚感にも酷似していた。巨大なコウモリのような動物は古代に生きていた恐竜を想起させた。恐怖の心に、憧れのような気持ちも混在した。それはエコーにとっても、まばたきするくらいの僅かな時間だった。我に返って猟銃を構えようとしたその時、コバートが襲われるのを離れた場所から目の当たりにする。恐竜コウモリの甲高い鳴き声がエコーの両鼓膜を鋭く痛く刺した。
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