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【400字小説】屋上のコンバース

4階建ての《コーポ銀河》の屋上にあがる。きれいな夜景があるわけでも、タワーマンションに風景を塗り潰されているわけでもない。ただある住宅街。近代的な図書館が見える。小児科の屋根が黄色い。風が生ぬるい。カレーの匂いはしない。

そこにスニーカーが転がっている。両方、底を空に向けている。誰かのコンバース。落ちていないキャップのロゴはニューヨークヤンキース?その女の背負うリュックサックは無地の紺だ。

わたしもすでに屋上にはいないという事実。怠く飛び降りたわたしは、下で痛みに苦悶しているはず。血が流れている。骨が砕けている。内臓が破裂して痛い、痛い、痛いはず。

2001年9月11日に生まれてしまった。すごく後悔している。悲鳴が聞こえた。すぐに電話で救急車を呼ぶ声がした。余計なことだ、余計なことだ。助からない、助かりたくない。銀河の星屑になりたい。コンバースが降ってきて、誰のかなと考えて、上にいるわたしのだと確信。

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