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【400字小説】四角い顔したオジサン

オジサンはホームレス。公園で暮らしていた。オレは交遊関係を持ち、真冬の豆腐鍋パーティに招かれたこともある。オジサンを狂人だって言う大人もいる。人殺しと呼ぶ大人もいる。顔が四角いだけなのにな、偏見。オジサンは画家を目指していた。ダンボールハウスはキャンパス。夢があるってことは大人ではなく、少年っていうことだから、オレは好きだった。

高校進学とともにシティへオレは引っ越した。いつの間にかオジサンのことは忘れた。学校生活が充実していたからだな。先日、オレのマンションが自殺現場になった。こんなことが起きると年中胸騒ぎしていたので驚かなかったが、駐車場に叩き付けられて死んでいたのは、オジサン。そのことはサプライズで久しぶりの再会にしてはエグかった。血が一滴もない遺体で、四角い顔だけは豆腐が崩れるみたいにグシャッてなっていた。グロくはなかった。むしろ、醤油をかけて食べてみたかったな。それが弔いの気もした。

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