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謝明文《釋古文字中的“葺”》前半部分の要約

甲骨文字には「𦥑」「林/艸」「宀」からなる象形字がある。両手で草木を屋根に被せる形であろうと思われる。

党相魁(2009: 122–123)は「次」字の伝抄古文「𦮏」と関連付けて、{茨}の表語文字と解釈した。しかし実際には「𦮏」は「𠂔」字に由来し、上の甲骨文字とは関係無い。

周忠兵(2012/2014)は、特に《合集》34688の上部を、西周金文(《三代》3.2.7、《銘図》不収録)の「衰」とされている文字と関連付けて、{茨}{衰}の共同表語文字と解釈した。

《三代》3.2.7「衰」

しかし「艸」の上部に「∧」があるタイプの字体は《合集》34688だけである。《合集》34688の上部と金文の「衰」を関連付ける必然性はほとんどない。

「𦥑+林+宀」を含む文字が春秋金文にある。一般に「𬜄」と隷定される。

春秋金文の「𬜄」

徐在國(2005)は、この文字の右下の「兄」とされている部分を、楚文字と比較して「咠」と同定している。趙平安(2009)はこの「𬜄」字を{諿}と読んでいる。

楚文字の「咠」

古文字字体の一般的傾向から言えば、「𬜄」字は「諿」に声符「𦥑+林+宀」を加えたものである。

したがって字形・字音より、甲骨文字の「𦥑+艸/林+宀」からなる字は、{葺}の象形字と同定できる。


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