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夏になってきたなと感じる瞬間

ぼくは看護師で、当然夜勤もやっている。夜勤をしているときの、窓から見える空の変化が好きだ。
夕焼けの空を傍目に夕食を配膳するのが好きだし、真夜中の寝静まった街の灯りが好きだ。未明早朝に歯磨きしながら眺める朝焼けは格別だ(朝休憩の時間)。

季節の移り変わりを空に感じることが多くて、冬から春に変わると日の出が早くなっているのを感じるし、秋から冬なら逆に日の出は遅くなるのも感じることができる。
「そんなの当たり前」と思われるかもしれないけど、患者さんも含め、街のみんながまだ寝ているときに働いている自分(たち)だけが感じられる風情だと思うとちょっぴり優越感だ。
夜勤を定期的にやっているからこそ感じるもので、眠い目を頑張って開けながら働いている特別感が好きだ。

夏、夜勤が終わって10時とか11時に病院を出ると、強烈な日差しが夜勤明けの目に刺さる。空が水色に光ってクッキリと積雲のコントラストを作っている空も好きだ。重たそうな雲がポツンと浮かんでいる空もイイ。

雨の匂いを知っているだろうか。すこし煙たい、土蒸すような匂い。
似たようなもので、夏の匂いもある。夏の匂いを言葉に表すのは難しくて、若い植物の青っぽくて少し生くさい匂いだ。この匂いは早朝に感じやすくて、朝露が日差しを浴び始めると強くなる。そして夏の日差しにやられて、どこかに行ってしまう。
いまぼくは田舎な地元を離れ、それなりの街に住んでいるから、夏の匂いはちょっと縁遠いものになってしまった。でも夕立があって、夜が明けて、朝が来たときにそんな匂いを感じることもある。
これは郷愁であって、きっとぼくが小さい頃に記憶した匂いを幻想しているだけかもしれない。

夏という季節は暑いし蒸すし汗でベトベトになるし散々なことも多いけど、自然の生命力を一番感じやすい時期なんだと実感できる。もう「夏はいいよ」とか「秋が早く来ないか」なんて思うこともあるけどやっぱり夏は夏でいいものだと思う。

今日はそんな夏に変わりゆく空模様と、夜勤明けの身体に無遠慮に突き刺さる日差しを感じて、「夏になってきたな」と感じる瞬間を再発見したのだった。

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