閃き💡劇場⑮

朝いつものように母親に見送られ学校へ向かう
「いってらっしゃい」
「いってきます」
外に出ると涼しい風が吹いた。
なんだかいい気分になれた。
バスに乗りタイミング良く座れた
一息つくと俺の目の前におばあさんが立っていた。一瞬迷ったが俺は席を立ち「ここどうぞ」と声をかけた。
「あら、ありがとう」老婆は微笑んで座った。
それを見て俺は満足した気分になった(今日もいい１日だ)

(へぇ、今時の若い子ってしっかりしてるのね)
一部始終を見ていた私は心なしか気分が良くなっていた。つい先程まで職場に行くのが憂鬱だったのだが、今の光景をみて心が温まる気がした。
駅に着いたので素早く降り、改札まで向かうと自動改札のところで立ち往生している年輩の女性がいた。
(どうしたのだろう？まだ時間に余裕あるし、聞いてみるか。)そう思った私は優しくその女性に声をかけた。
「どうされました？」
「なんだかねぇ、上手くいかないのよ」
「そうなんですね…」
さてどうしたものかと何気なく駅の案内所を見たら駅員さんが手招きをしている。一部始終を見ていたようだ
「おばあちゃん、駅員さんのとこに行きましょう、手招きしてるから」
「あら本当？ありがとうね」
私はそれを見届けると足取り軽く駅のホームへ向かった、こんなに気分がいいのはあの高校生のおかげだろう優しさって伝染するのかしらねと思いながら。

(朝からいいものみたなぁ)
駅の改札で少し離れたところから女性の一部始終を見ていた中年の男性はそう思った。
様子を見ていたのだ自分が助けようかと。
(朝忙しいのに助けようとするなんて日本もまだまだ捨てたもんじゃないな)と思った。
(気分がいいから今日は職場の皆に美味しいお菓子でも買おうかな？)
彼は中小企業の社長である。
(普段よくやってくれてるし、たまには恩を返さないとな)
彼はそう思いながらお土産コーナーへ向かった

「わー社長ありがとうございますー！」
「ここのお菓子すごく人気あるんですよね、よく買えましたね」
皆思いの外喜んでいる。
その姿をみて
(良かった皆喜んでいる。こんないい気持ちになれたのもあの女性のおかげだな)と心が温まる気がした。
「社長、紅茶淹れました。どうぞ」秘書が紅茶を淹れてくれたので、一口飲むといつもと違うよい香りがした。
「これ、どうしたの？」
「お茶の淹れ方を変えたんです。社長にもっと美味しいお茶を飲んで貰いたいと思ってネットで調べてたら簡単な方法があったので試しに淹れて見ました、美味しかったですか？」
「うん、凄く美味しい。ありがとう」
(お礼をしようとしたらさらに返されてしまった、いいことって伝染するんだな)
と彼は笑顔でお茶を飲み干した

「よし、俺も社長を見習って家族に土産買って帰る！」
１人の中年の男がそう宣言した。
「そうですね、部長もいつも忙しいからたまには早く帰ってご家族孝行した方がいいですよ」
と皆が言うので、皆の厚意に甘えて定時で帰り、家族が大好きなケーキを買って帰ることにした。

「ただいまー」
「あらおかえりなさい、今日早かったのね」
「あぁ、皆が早く帰してくれたんだ、社長が朝から機嫌が良くてね、お菓子を頂いたんだ、それを見ていたらお前達が好きなケーキを買って帰りたくなったから買って帰ってきた、夕飯の後皆で食べよう」
と私が言うと
「あら嬉しい、ちょうど食べたいと思ってたのよ、健彦、お父さんがケーキを買ってきたわよ！」
「まじ？ありがとう親父」
と健彦と呼ばれた青年が部屋から出てきた
「いいことってするもんだね、今日朝おばあさんにバスの席を譲ったんだよ、そしたら凄く喜んでくれて、一日中いい気分だったんだ、そしたらケーキが食べられるし、これからもいいこと沢山しようと思う」
と健彦は言った。
「そうなのか、お前も成長したなぁ」と俺は息子の成長をしみじみ感じた。

何気なくしたことが誰かに影響を与える。それならいい影響を与えたいですよね。
これはそんな話です。