閃き💡劇場⑲

「なんで私の人生ってこんな踏んだり蹴ったりなんだろう」
私は行きつけのbarでくだを巻いていた。
私の名前は岸辺京子。結婚まで話をした彼氏からいきなり別れを言われ、悲しみを発散するために行きつけのbarでお酒を浴びるように飲んでいた。
この２週間、会社も倒産し、すぐに就職先は見つかったが仕事に馴染めず、彼に話をしようと思っていたら、いきなり別れを切り出された。他に好きな人ができたらしい。
「10年、10年だよ？そこまで付き合ってきたのに、私の費やした時間を返して欲しいよ、どう思う？マスター」
「今は辛いかもしれないけど、新しい何かが始まると思って頭を切り替えてみたら？」
「新しい何か？」
「そう、もっと幸せになれる何かが待ってるかもよ？」
「あいつよりいい男に出会えるかな？」
「大丈夫だよ、絶対に出会えるから！何だったらここ紹介するよ」
とマスターは懐から一枚の名刺を取り出した
「何これ？占いの館セラヴィ？」
「そうよく当たるんだって、見て貰えば？」
「へー、行ってみようかな？」
私はその名刺を携帯ケースに入れておいた。

仕事休みの日、私はその占いの館セラヴィに来ていた。
(本当に当たるのかな？？)
不安に思いつつ建物の中に入っていく。
「いらっしゃいませ、初めての御客様ですか？」
「は、はいそうです」
私は緊張しながらそう答えた。
「ではこちらのアンケートにお答えください。」
とアンケート用紙とボールペンを渡され席へと案内される。
一通り書き終わり、一息つくとようやく周りを見る余裕ができた。
まるでヨーロッパの昔の神殿のような雰囲気で、天使の像やら花飾りが飾られてたりする。
どこからともなく漂う甘いアロマオイルと思われる香りが癒しを演出していた。
「岸辺様」
ボーッとしかけたところに受付の女性から声をかけられる。
「はい。」
私は立ち上がろうとすると「そのままでいいです。」
と制止され受付の女性がこちらにやってきた。
「初回とのことですが、どなたかご紹介を受けましたか？」
「はい、知り合いからここの名刺を頂きました」
とそれを私は見せた。
「初回50%割引のものになりますね。50000円から25000円になりますがよろしいですか？」
「え？、あ、はい大丈夫です」
割引になっても予想外に高いためびっくりしたがとりあえずそう答えた。
「アンケートを拝見しました。今後の人生について伺いたいとのことですね」
「はい」
「今なら人気の霊感タロット占いと手相ができるレイ先生がオススメですがいかがでしょう？」
「あまりよくわからないのでお任せします。」
「では、レイ先生のところへご案内致します。」
「お願いします。」
私は受付の女性にレイ先生と呼ばれる占い師がいる部屋へと案内された。
「どうぞ」
「はい、失礼します。」
私は促されるまま部屋へと入る。

「初めまして、レイと申します。」
「え？あ、初めましてよろしくお願いします。」
(女性かと思ったら男性だったのね)とびっくりして顔をあげると見覚えのある顔が見えた。
「マスター？！」
なんと行きつけのbarのマスターがそこにいたのだ。
「よろしくねー、びっくりしたよねー」
マスターはニヤニヤしながら楽しそうに言った
「どう言うこと？」
「俺、日中はここで占いしてるの、霊感があるからそれを生かさない手はないなと思って。いい副業よー」
と私の問いに楽しそうに答える。
「知らなかった、あの時占ってくれても良かったのに」
「それでもよかったけどね、他のお客様いるし、京子ちゃん泥酔してたから無理だなと思って、こっちのがゆっくりできるでしょ、じゃ早速占うね、座って」
マスターは座るように指示するとタロットをシャッフルし始めた。
そして何枚かのカードを並べていく
(本当に当たるのかな？)
ドキドキしながら見ていると
「なるほどね、京子ちゃんあいつと別れて正解みたい。このまま結婚していたら、泥沼になってたよ。」「そうなの？」
「そう、何となく見えるんだけど最近ブランド物とか身に付けてない？」
「あ、そう言えば…」
確かに最近腕時計やらブレスレットやら高い物を身に付けていた。
「浮気相手の影響で派手好みになったみたい。でもその子のせいで人生が狂わされるみたい」
「え？大変じゃない」
「でも自業自得ね、長年付き合ってきたのにあっさり振るような誠意がないやつは別れて正解だよ」
とマスターはバッサリ言った。
「そうね…。京子ちゃんも変わらなきゃダメ。今から言うことを実行できるかな？」
「な、何？」
「一つ目は毎日最高の笑顔で皆に挨拶すること。
二つ目土日のどちらかでご近所のゴミ拾いをすること。」
「え？」
意外な提案に私はポカンとしてしまった。
「見えるのよ。それをする京子ちゃんが素敵な男性と出会う姿が。タロットも１ヶ月後に出会いありとでている。けどそれには京子ちゃんがブラッシュアップしないとダメとでている」
「挨拶とゴミ拾い…」
「今の京子ちゃんとは雰囲気が全然違う、光のオーラに溢れている。そこに素敵な男性が惹かれるみたいよ、どうする？」
「うーん…やってみる」
私はしばらく考えたのちそう答えた。

それからというもの、私はマスターに言われたように最高の笑顔で挨拶したり、週末にゴミ拾いをして過ごすようにした。
すると周りの人から
「最近明るくなったね」
「すごく幸せそうだけど何かあった？」
と聞かれるようになった
(挨拶とゴミ拾いでここまで印象が変わるなんて本当にビックリだわ)
と驚きつつ１ヶ月が経とうとしていた。
土曜日私はいつものように公園でゴミ拾いをしていると高価な腕時計を見つけた
「あら、どうしましょう」
私はしばらく考えて、交番に届ける事にした。
交番に行くと、そこには私好みの男性がいた。
先客だなと思いつつ「あのー、時計の落とし物なんですけど」
と声をかけるとその男性もお巡りさんも物凄い形相でこちらを見る
「どんな時計ですか？！」
「これです。」
と見せると
「これです！この時計ですよ！」と男性が大喜びしている
「え？」私がポカンとしていると、「あ、申し訳ない、時計をなくしたので手続きをしていたら、その時計をあなたが持ってきてくれたのでつい」
「良かったですね、ちなみにどこにありましたか？」とお巡りさん。
「向かいの公園の噴水のところに落ちてました」
「あー、あそこで水が冷たくて気持ち良さそうだから手を洗おうと時計を外したんだ、だからか！本当にありがとう！お礼をさせてください！」
「え？！いいんですか？」
「もちろんです！連絡先交換しましょう」
と半ば強引に連絡先交換し、その後のお食事の約束まで話は進んだ、そしてお食事会では楽しい時間を過ごし、何度か会うようになり、お付き合いが始まり、結婚まで話がトントン拍子進んだ

「こんばんは」
私は久しぶりにマスターの店に行った。
「あら、京子ちゃん久しぶりー、元気だった？」
「おかげさまで、今度結婚することになりました」
「あらー、おめでとう！良かったわね。オーラも前とは違う明るいから幸せになれるよ」
「本当にマスターのお陰ですありがとうございます」
「よかったよ、乾杯しましょ」
私達は乾杯し、楽しい時間を過ごした。
「挨拶とゴミ拾い、いまでもつづけているけど、始めてから皆私のこといい人だっていうの。私は何も変わってないのに、不思議よね」
と私が言うとマスターは
「どちらも人が喜ぶことだからだよ」と言った
「京子ちゃんも明るく挨拶されたら嬉しいし、家の前を掃除してくれたら嬉しいでしょ？」
「確かに。」
「人に喜ばれることをするとそれがプラスとなって返ってくるの、これからも続けてね」
「ありがとうマスター、これからも続ける」
私は最高の笑顔でそう言った。