閃き💡劇場22

私の名前は崎谷翔子。介護老人施設で介護福祉士をしている。
おばあちゃんが大好きだった私は将来おばあちゃんの面倒をみたい！と思い資格を取り、おばあちゃんの最期まで見届けた。その時おばあちゃんから、「あんたの笑顔は人を救うんや、だからいつも笑ってなさい」と言っていた。

それから5年、色々なところで私は一生懸命仕事を続けて、今の施設で仕事をしているが、人手不足のため、いつもギリギリなシフトで仕事をせざるを得なくなり、休みの日はひたすら寝てばかり、いつしか私から笑顔はなくなっていた。

(今日も仕事かぁ早番だからまだましかな？)そんな事を思いながら出勤すると、「今日も忙しいわね」と明らかに嫌そうなオーラを含んだ言葉を言う人がいた。
彼女は藤谷さん。ベテランの看護助手だが、彼女はここのお局様で、嫌なことはみんな人に押し付けたり、利用者さんにもあたりが強い。
(利用者さんが聞いてるとこで何もそういう事を言わなくても…)と思いつつ仕事の準備をしようとすると
「ちょっと崎谷さん、何か文句あるの？」
「え？」
顔にだしていたのだろうか？まずいと思いつつ「何のことですか？」と聞いた。
「あら、そうなの、ならいいわ」
と一旦藤谷さんは引き下がったがここから私にとって忘れられない１日になるスタートが始まった。

「崎谷さんこれもお願いね」
「え、あ、はい。」
藤谷さんはいつにもまして面倒な仕事をこちらに回してくる。
(やっぱり顔に出てたかな？)と思っていると「やる気あるの？！」と絡んでくる「申し訳ありません、今の仕事が終わったらすぐに取りかかります。」と答え黙々と作業に集中する。
「まったく今時の若い子は」
藤谷さんはぶつぶつ文句を言いながら別の部屋へいく。
その様子をじっと見ている人達がいることに気づかずに

それからもことあるごとに面倒な仕事を押し付けてくる藤谷さん、でも自分は仕事せずにフラフラしている。
「崎谷さんそれがおわったらこっちをやってちょうだい」
次から次へと仕事を振られる。
正直めまいがすると我慢の限界がきてしまった。
「少し休ませてもらってもいいですか？」
「あらなによ、皆人数ギリギリなのに頑張ってるのよ、あなただけ特別扱いできないわよ、ね、主任さん」
藤谷さんは主任に甘えるように言った。
すると一部始終を見ていたのか
「崎谷さん休んでいいから、藤谷さんがやってください」と言った
「なんでそうなるんですか？！私だってやることありますよ！」
「それをさっきから崎谷さんや他の人にやらせてるじゃないですか、その割には忙しそうにしてない。それならできますよね」
と主任は冷静に言った。
「な、なんなのよ」
藤谷さんが怒りを露にしていると。
「俺達も見てたんだぞ」
と利用者さんも主任に加勢した。
「今日だけじゃない、この１ヶ月は特に酷い、他の人にもだが、翔子ちゃんに特に押し付けてるとこ何度も見てるんだぞ！」
「利用者だから我慢していたがもう限界だ、この女を指導してください！」
「藤谷さんあんたどうしたんだよ、以前はもっと優しかったろ？今のあんたおかしいよ」
と皆が一斉に不満を言い出した。
「～！！」
藤谷さんは声にならない怒りを発してその場から逃げてしまった。
「あ、逃げるのか！」
利用者さんがそう言うと主任が「私が行きますから、皆さんはここでお茶を飲んでください。崎谷さん後よろしく、終わったら休んでいいから」と言った
「申し訳ありません、よろしくお願いします。」
私はそう言うとお茶をいれ始めた。
すると利用者さんが手伝ってくれた。
「翔子ちゃん大丈夫？疲れてるなら休みな」
「そうよ、あんたが倒れたら皆心配するよ」
「俺、翔子ちゃんの笑顔好きなんだ、最近笑ってないだろ？休んでまた笑ってくれよ」
「そうよー、皆あなたの笑顔に癒されてるのよ、あなたが来てくれてから本当にここの施設明るくなったわ」
皆が言ってくれる言葉に私は涙が溢れてきた。(誰も見てないと思ってたけどこんなに優しく見守られていたなんて)と心が温かくなるのを感じた。
「昔は藤谷さんもそうだったんだけどね、昔のお局に大分やられてたから変わっちまってね、それでもよく仕事してたもんだが、最近どうしたんだろうな」
「さぁ、知らんよ」
その話を聞いた私は
「そうなんですか？」
と聞き返した。
「あぁ翔子ちゃんはまだ３ヶ月しかいないか、俺はここ長いからわかるけど、ベテランだから厳しいとこは厳しいけど、明るい人だったのにこの１ヶ月人が変わったように悪くなってきたな」
「そう言われてみるとそうね」
「どうしたんだろうね」
利用者さん達と私はそんな話をしていると
「崎谷さんちょっと」
と主任に呼ばれた
主任と一緒に来た他の職員が「俺、変わるから」と言ってくれたので交代し、主任の元に行く。

「急ですが、藤谷さんは今日から１ヶ月お休みします。」
「え？」
「ご家族の介護で大変みたいで、１ヶ月くらい休んでもらうことになりました。」
「そうなんですか…」
「崎谷さんも大変だったと思うけど、藤谷さんのご事情もあるから…。悪い人ではなかったのだけどね」
と主任がため息つきながら言う。
「何があったんですか？」気になった私が質問すると。
「…実はね」
主任が藤谷さんの事情を話始め、聞いてるうちに私は納得した。藤谷さんも大変だったのだと。
「そういうことだから、崎谷さんも大変だけど、残った我々でしっかりやりましょう！」
「はい！わかりました！」
私は藤谷さんの分までしっかり働くと心に決めた。

続く。