閃き💡劇場24

「おはようございます」
「おはよう」
今朝は清々しい朝だ、とても気分が良い。
藤谷さんが休みを取ってから皆でどうすれば利用者さん達が楽しく安全に生活できるか何度も話し合いをした。利用者さんは様々だ、普通に歩ける人もいれば、車椅子の人もいる。けど同じ同居人だ、そして私たちもそのサポートをする立場とは言え同居人と言えないだろうか？と。
だとしたら、同居人同士仲良くできるにはどうしたらよいだろう？となった時、いくつか案が出たがそのうちの一つに元気よく挨拶しようというのがあった。
利用者から言われたのは皆ピリピリしていて声をかけにくいと言われたことがあると私が発言したところ、
主任さんの提案で明るく挨拶をしようと言われた。質の良いコミュニケーションは明るい挨拶からだという。私達はいくつかでた改善案を実行した。それは少しずつ効果が現れている気がする。

「おはよう崎谷さん」
「あ、おはようございます」
私は元気よく同僚に声をかけられビックリした。
「大丈夫？？そう言えば今日は藤谷さんが来る日だよね」
「あぁ、そうですね、きっと大丈夫ですよ！」
「そうだね、今日も頑張ろう！」
今日は藤谷さんが来る日だ。主任さん、施設長と面談しいつから復帰するのか相談するらしい。
私はある決意をしていた。
(藤谷さんに今の自分を見てもらいたい、そのためにきちんと伝えなきゃ)

それから少しして、藤谷さんが来たと知らされた。
私達は笑顔で顔を見合わせた。

(１ヶ月いないだけでこんなに雰囲気が変わるのね)
私は久しぶりに施設に来ていたが前より明るい雰囲気になっていた。職員の発する声が以前とまるで違う。とにかく明るいのだ、だから利用者さんも明るい。
(どうしたのだろうこの変化？)
と考えていると
「藤谷さんお久しぶりです。体はどうですか？」と主任さんが声をかけてくる。
「はい、お陰様でゆっくり休めました。ありがとうございます」
と私はお礼を言うと
「それはよかった。面談入る前に少し施設内を見て回りませんか？今の現状を見てもらいたいんです。」
「そうですね…わかりました。お願いします。」
私は少し考えてそう言った。

色々見て回ったが皆元気で以前より活発になっている。笑顔が絶えない環境に私はビックリした。
スタッフも前と変わらないようで実は変わっている
あまり口うるさく注意せず、優しくけど毅然とした態度で接するようになっていた。
その中には崎谷さんもいた。
「だめですよ山崎さんこの前も注意しましたよ。」
「だって美味しいんだもん」
「美味しいから皆も食べたいんです。だからそのお菓子元に戻してください。」
「でも…」
「怒りますよ」
と崎谷さんは厳しい顔をした。
「わかったよ、返す」
「じゃ預かりますね」
崎谷さんは笑顔でそう言うと山崎さんからお菓子を取り上げると元に戻していた

「…」
「変わったでしょ？崎谷さん。」
「そうですね、崎谷さんだけじゃない皆変わってる。一体どうして？？」
「藤谷さんが休んでから皆で話し合いをしたんです。そこで藤谷さんの話をさせてもらいました。皆泣いてましたよ。なんで相談してくれなかったって」
「泣いてた？」
「そう。仲間なのにそんなに頼らないかって」
「あ…」
「その時藤谷さんの思いもお話しました。そうしたら皆物凄く反省してね、崎谷さんも泣きながら反省してましたよ。」
「そうなんですか…」
「その後、皆でどうすれば皆が明るく仕事できるか、利用者さん達が楽しんで生活できるかを相談して、やっとそれができるようになったところなんです。」
「そうなんですね…」
「藤谷さんに見てもらえて良かった。面談でも話しはしますが、藤谷さんに是非復帰して皆の指導をしてもらいたいです。」
と主任さんは言った
「そのことですが…私辞めさせて頂きたいと思ってるんです。」
「やっぱりそう言うと思ってたんだ、ちょっと待って、崎谷さん！」
主任さんは崎谷さんを呼びに行った
「あ、あの！」
「崎谷さんの話を聞いて貰いたいんです。だからちょっと待って」
(今更何を言われても辞めると決めたんだけどな)
私は自分のしたことを振り返り、反省し、辞める決意をしたのだ。
(私がいることで雰囲気が悪くなるそれなら辞めた方がいい)そう思ったからだ。
「藤谷さんお久しぶりです！元気でしたか？？」
と崎谷さんは明るく私に話しかけてきた。
「え？えぇ元気よ、お陰様で、ありがとう。迷惑かけたわね」
私は戸惑いながらそう答えると
「藤谷さんがいない１ヶ月本当に大変でした。藤谷さんが陰でどれだけ利用者さん達が安心して生活できるように心配りしていたか思い知りました。それだけじゃなく、私達スタッフがどうすればもっと良くなるか気をつけて見ていたことも主任さんから聞きました。全部１人で抱えこんでたって」
崎谷さんは一気にそこまで話し、「そんなに私達、頼りないですか？」と聞いてきた。
「…だって、何度注意しても良くならなかったじゃない。だからダメなのと思った。」
と私は本音をつい言ってしまった。
「そういうの私の仕事ですから」と主任さんは苦笑いしていた
「私もつい藤谷さんに頼りすぎていたとこがあったと反省しました。で、皆で話し合いどうすれば藤谷さんの思いを無駄にしないようなできるか考えたんです。あなたが戻ってきたときにあなたが楽しく仕事できるように」
「主任さん…」
「私もお伝えしたいことがあります。」
「崎谷さん。」
私は少し身構えた。
「以前私が利用者さんから誉められてるところを見ていたそうですね」
「…そうよ」
「あの時私、実は困ってたんですよ」
「え？」
私は崎谷さんの思いもよらない言葉にビックリしていた。
「他のスタッフの目もあるし、止めて欲しかったけど皆ヒートアップしちゃって、結局他のスタッフに助けてもらいましたが」
「そうだったのね…」
私は崎谷さんに対して誤解していた事に気付いた。
「藤谷さんならどうするだろうってずっと考えてました。そうしたら、私には厳しさが足りないんだって気付きました。主任さんにも言われましたが、優しすぎるのは良くないと私達の仕事は利用者さん達を安心安全で楽しく生活できるようにすること、そうするためには時に厳しい事を言わなきゃいけないこともあると痛感しました。私、もっと藤谷さんに教わりたいこと沢山あります。だからお願いします！一緒にまた働きませんか？お願いします！」
崎谷さんはそう言うと勢いよく頭を下げた。
「いいの？本当に。私特にあなたに意地悪したのよ？許してくれるの？」
「大丈夫です！こちらこそ申し訳ありませんでした！藤谷さんの思いを無視してばかりでごめんなさい」
「これからは皆で話し合ってより良い職場を作りましょうよ、それともまた逃げますか？」
と主任さん
「…そう言われると、ありがとうございます。ごめんなさい、続けさせてください。」
私は涙を流しながら言った。
「良かった」
崎谷さんと主任さんは笑顔で言った。

それから数日後私は完全復帰した。
以前とは違い皆私に色々聞いてくる。私もそれに笑顔で応えた。
その様子を見ていた利用者さんがある日
「藤谷さん、あんたに感謝しないといけない」と声をかけてきた。
「？？どうして？」
「あんたがいない１ヶ月、実はわしら喜んでたんだけど、時が経つに連れ、あんたがしてきたことがわしらが安心して生活するために必要だったて気付けたんだよ、主任さん達もそれに気付いただから皆変われたんだよ本当にありがとう」
「…！」
私はふっ気が緩んでしまい涙がこぼれた
「いやだなぁ泣かないでよ、笑ってくれよ、笑子さんなんだから笑ってなきゃ、俺あんたの笑顔も好きだよ」と利用者さんが言うとさらに泣いてしまった。
「どうしよう困ったな」利用者さんは苦笑いをしていた。
「ありがとう」
私はそう笑顔で言った。