漫画の話『俺と悪魔のブルーズ』〜その音楽の名はブルーズ〜
さて、漫画の話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。
音楽を扱った漫画は数多くあります。名作、傑作と呼ばれているものだけでも、ハロルド作石『BECK』二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、石塚真一『BLUE GIANT』, etc. 挙げればきりがありません。しかし、私が最高の音楽漫画をひとつ挙げろと言われれば、選ぶのはこの漫画！平本アキラの『俺と悪魔のブルーズ』です！
作者の平本アキラは『アゴなしゲンとオレ物語』というナンセンスギャグ漫画で人気が出て、『監獄学園』というエロギャグ漫画をヒットさせましたが、この最高の作品はこれです！断言します！！では行ってみましょう！
あらすじ
1929年のアメリカ、ミシシッピ州の農園で働く黒人のRJは、出産を控えた愛する妻や友人に恵まれ、満足した生活を送っていた。RJの唯一の息抜きは、週末にジューク・ジョイント（居酒屋とライブハウスを兼ねたような、当時の黒人の社交場）に行く事。しかし、RJのギターはどれだけ練習しても一向に上達しない。ジューク・ジョイントでたまに会う憧れのブルーズマン、サン・ハウスからも「ボウヤ」とからかわれ、一人前とみなして貰えない。
ある日、RJはジューク・ジョイントで「十字路で演奏すると悪魔が現れ、魂と引き換えに恐ろしいほどのギターを弾けるようになる」という噂話を聞く。その夜の帰り、酔って十字路でギターを弾いたRJは、次の日から自分でも信じられないほどのギターを弾けるようになる。ジョーク・ジョイントでは皆を魅了し、サン・ハウスすら圧倒され敗北を認めるほどのギターを弾く。しかし、その演奏の最中現れた姉夫婦に、RJは自分が半年間行方不明だった事、妻が出産の際に子供と共に死んでしまった事を聞く。RJは全てを失い、十字路で出会った「悪魔」、アイクと名乗る謎の男と故郷から旅立つ。
ブルーズは加速していく
ブルーズ（＝ブルース。簡単にいうと19世紀後半に生まれたギター使った黒人音楽）や音楽に詳しい人ならあらすじ読めばすぐ分かりますが、このRJという主人公はロバート・ジョンソンという実在の伝説的なブルーズミュージシャンをモデルにしてます。この作品ではRJという略称しか出ないもののイニシャルも同じですし、「十字路で悪魔に会った」というのもロバート・ジョンソンの有名な伝説です。しかし、その辺の音楽オタクが喜びそうな話は全く知らなくてもOKです！そんな事とは無関係にこの作品は素晴らしい！
まず悪魔と2人で旅に出る、これだけでも私はワクワクしちゃうんですが、なおかつ作品の舞台は黒人差別が色濃い1929年なので、RJは黒人であるというだけで何度も危機に晒されます！あっ、ちなみにこの時代の「黒人差別が色濃い」というのは、黒人というだけで普通にリンチされたり殺されたりするって意味です。当然、RJも様々なトラブルに巻き込まれるのですが、それをブルーズの悪魔的な力で乗り越えます。
だが、ブルーズの悪魔的な力を使っていいのか？しかし使わないと死んでしまうといった感じで、RJはどんどんブルーズの深みにハマっていきます。こういう呪われた力を使うべきか？っていうテーマって燃えません？私はもう…大好きです！
なんという表現力
そして絵！はっきり言ってこの作者は無茶苦茶絵が上手い…というわけではありません。しかし、漫画の表現は素晴らしい！
どうです？集中線やオノマトペ（効果音みたいなの）を使わずこの緊張感、脱帽です。そして音楽漫画といえばやはり演奏のシーン！もちろんこの作品が一番いいのもそこです！
楽器の音や歌声を書かずに、絵だけで音を表現する事は漫画ではよくある表現です。しかし、ここまでの緊張感を出せる作家は稀です！他にも例えばこのシーン！
言ってしまえば、RJの演奏で周囲の人々が驚くというだけのシーンですが、モザイク状のコマ割りで配置した人々を、コマごと吹き飛ばす形で驚きを表現しています。さらに吹き飛ばされたコマの背後にRJを配置することで、RJに注目が集まったという事も分かるようにしています。もちろん、コマの中の絵の変化でも驚きや時間の経過（例えばタバコが燃え進んでる）を表現すことも忘れません。このシーンで描かれる「音」が、RJの実力を知っている友人、クライドの独白だけというのも心憎い演出です。もうこの演奏シーンのためだけに読んでもいいぐらいに…最高！
まとめ
音楽漫画が好きか、もしくは音楽が好きな人には文句なしでオススメできます！ブルーズが好きならもう文句なし！今すぐ読め！リードナウ！！
あと、一点だけ注意点としてはこの漫画5巻の良いところで中断になっています（打ち切りではない）。なんか資料が足りなくなったとかなんとか5巻の巻末に書いてありましたが本当かどうか…ともかく早く再開してくれ！！
本日の漫画紹介でした！
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