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漫画の話『荒野に獣 慟哭す』〜圧倒的画力で描かれる、人と獣と神〜

さて、漫画の話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。

今日紹介するのは『荒野に獣 慟哭す』です!作者は漫画好きなら知る人ぞ知る(要するに一般的にはあまり有名ではない)伊藤勢!原作は『キマイラ・吼シリーズ』や『餓狼伝シリーズ』で有名な夢枕獏!私としては、凄い…ドリームコンビだ…!って感じなんですが、残念ながら一部マニア受けの域は出てませんね…。ともかく紹介していきましょう!

文庫版1巻表紙(このイケおじは主人公のライバルの薬師丸法山)

あらすじ

若き天才科学者、御門周平(みかど・しゅうへい)はジャングルの奥地の食人族から未知のウィルスを発見する。「独覚(どっかく)ウイルス」と名付けられたそれには、人の潜在能力を開花させ、獣人化させる効果があった。独覚ウィルスを利用し、独覚兵と呼ばれる獣人兵士が生み出される。御門は独覚兵と独覚ウィルスを葬るため、自らも独覚兵となるが、記憶を失ってしまう。自らの過去を追い求め、御門は独覚兵と時に戦い、時に協力する。独覚ウイルスの根源を探しユカタン半島までやって来た御門は、衝撃的な真実を目にする。

主人公の御門周平

画力の暴力

この作者は画力が高い事で(一部で)有名なのですが、この作品も本当に絵がいいんです!素晴らしいページやコマが多すぎて、どれを紹介するべきか悩みますが、例えばこれ!

御門と法山の最後の戦い

アップで迫力を出せる作家は多くいますが、ロングでこれだけの緊張感と迫力、素晴らしい。そして速度を表現するために、オノマトペ(擬音語)をギリギリまで減らし、あえて少ないコマを使う。単に絵が上手いだけではなく、漫画が上手いと言うべきでしょう。本当に…最高だな!

人と獣と神の境目とは?

画力も素晴らしいんですが、話も本当にいいんです。個人的には夢枕獏の原作小説より完成度高いんじゃないかと思います(例えば原作小説は法山が独覚兵になってしまい、御門との対立軸がブレる)。特に、「人と獣と神の境目はどこにあるのか?」というテーマを、人が獣化するウィルスという舞台装置で見事にまとめ上げているのは圧巻です。

咆哮する御門

そして、独覚(一人で悟り、孤独に生きる聖者の事)や主人公のライバルである法山の言動(釈迦や弥勒菩薩を思わせる言動をする)に代表される仏教的要素を、メソアメリカ文明と融合させるセンス。さらに、最終的には世界中の神話を繋げるという壮大なストーリーになっています。こういう複数の国の神話や伝説を繋げる話って、ワクワクして本当に大好き!あっ、少し諸星大二郎の『暗黒神話』と『孔子暗黒伝』のパク…影響を受けたと思しき個所もありますが、許してあげましょう!

まとめ

ちなみにこの作品、掲載紙を変えたり休載したり色々あったんですが、10年位かけてちゃんと完結しています!連載中断した時はもう再開しないと諦めてたんですが、本当に完結してよかった。

黒豹に乗って飛ぶ御門(この迫力!)

漫画が好きで、神話や伝説が好きな人には間違いなくオススメできます!圧倒的表現力で繰り広げられる世界に飛び込みましょう!

本日の漫画紹介でした!


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