2022/9/26 マンガで学ぶ時代  

内田樹の「本が読む」というエッセイ(『子どもは判ってくれない』所収)に高校時代の雑誌部の友人がニーチェやウィリアム・ジェームズやらを原稿に書いてきて、上級生や作者が絶句したという話がでてくる。結局、コリン・ウィルソン『アウトサイダー』(福田恒存・中村保男訳)に作者が出合い、引用の元ネタがわかるという話だが、この『アウトサイダー』的な本、つまり広い教養を与えてしまうような、早熟な人間を育ててしまうものとして、現代はマンガがあるのではないだろうか。

 小学生の息子が『Dr. STONE』(原作:稲垣理一郎、作画:Boichi)にはまっている。人類が石化した世界を、科学の力で生き延び、もう一度科学文明を興そうというような話だ。私も途中の巻まで読んだが、人間の生活のすみずみにまで科学が浸透しているのを読み進めるたびに感じ、学校で「なんで科学なんて勉強しなきゃなんないの?」的な弱音は、このマンガで一発KOできる。

逆に、このマンガを読んでいる子は、難解な科学用語にも耳慣れているはずで、表面的な知識だけなら小学校教員よりも上にいる可能性すらある。なにせマンガでは、サルファ剤や真空管、そして携帯電話や自動車まで作ってしまうのだから。(私が読んだのはまだこのあたり)

広く情報をとるのは「新聞」から、深めるのは「専門書籍」というようにメディアの活用の仕方を教えることがあるが、これからは、新聞→専門書籍の間に、マンガを入れて、新聞→マンガ→専門書籍の順で学んでいけば、モチベーション維持にもなり、書籍からの吸収も早まるに違いない。マンガは日本の誇るサブカルチャーだが、サブではなく、メインをはれるときが近づいてきている気がする。

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