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JUMP、パリでの電動自転車・キックボード事業撤退(翻訳記事)

新型コロナウイルス禍で交通業界が打撃を受ける中、マイクロモビリティも例外ではありません。シェアサイクル大手のJUMPが世界の主要市場の1つとしてきたフランス・パリから撤退しました。フランスの日刊新聞Le Parisianインターネット版に掲載の記事「L’opérateur JUMP retire ses vélos et trottinettes électriques de Paris」を翻訳します。

翻訳: 孕石直子・監修: 伊藤昌毅

2020年6月15日
Sébastian Compagnon

Uberの子会社でLimeに譲渡されたJUMPが、週末、同社のドックレスレンタル電動自転車をパリ市内から撤収した。Limeはレンタル自転車を「今後数週間以内に再配備する」と断言するものの、明確な日付には触れていない。

2019年4月にパリでのサービスを開始したばかりのJUMPは、日曜日、同社の電動自転車5,000台と電動キックボード430台をパリの通りから引き上げた。2018年にJUMPを買収してサービスの多様化を図っていたUber。今週月曜日にUberアプリを確認すると、残された数十台の車両が地図上に表示されるだけだった。

「日曜日に全ての車両が一気に姿を消しました。翌朝、パリ北部で利用可能な自転車が1台あったという写真を見ましたが...月曜日からの移動をどうしたらいいのか、同社からユーザへの通達は何もありませんでした。会社には遅刻です。憤っています」とパリのJUMP常連ユーザ、コンスタンスさんは取材に応じた。

マイクロモビリティ市場の観察を専門とするFluctuo社の数字によると、米サンフランシスコ発で真っ赤な塗装がトレードマークのJUMPは、パリの既存シェアサイクルサービス「Vélib'」(1ユーロ+1分ごとに15セント)よりも高額なサービスであったにもかかわらず顧客を獲得し、パリ市内で1台あたり1日平均4~5回レンタルされていたという。

パリはこれまでJUMPの主要な世界市場とされてきた。そこからの急な撤退の理由は、新型コロナウイルスだ。新型コロナウイルス蔓延の影響は、脆弱なマイクロモビリティ市場を直撃し、JUMPもその犠牲者となった。

米国では数千台の自転車が廃棄

JUMPの親会社Uberは、5月上旬、コロナ危機が始まって以来深刻な財政難に陥っていた電動キックボード事業者Limeを救済するため1億7000万ドルを投資したことを発表した。そして共通の株主(Googleの親会社Alphabet)を持つ2つのグループ間の合意により、LimeがJUMPを買収することになった。負債が膨らむUber自身も、コロナ禍で従業員の4分の1近くを解雇した。

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パリ第12区・6月15日(月)。Lime によるサービス再開を待ち、何百台ものJUMPの電動自動車が保管されている/LP/Olivier Lejeune

オペレーションに対する判断は早かった。5月末、欧米の多数の都市からJUMPは姿を消し、何万台もの車両が廃棄された。まだ状態の良い真っ赤な自転車が廃棄される映像は衝撃的であった。JUMPは、同社の電動自転車はメンテナンスや特殊な工具が必要で、譲渡や転売が困難だったと説明した。

電動自転車再配備は「今後数週間以内」の予定

LimeはパリでJUMPの穴を埋めるのだろうか?現時点では明確にされていない。フランスのUberの広報担当者は「欧州での(Limeとの)提携はまだ終了していないが、Limeへの業務移管に備えて、自転車やキックボードの大半を倉庫に移動した」と述べる。JUMPは、パリの第3区、第12区、第16区、オーベルヴィリエ(セーヌ=サン=ドニ)にメンテナンスセンターを設置している。月曜日、ある情報筋が、Limeはパリで 「すぐにも」自転車レンタルサービスを再開すると発表すると伝えた。しかし火曜日にLimeコミュニケ内でLime運営者からあった公式発表は「電動自転車は今後数週間以内に再配備され、LimeとUberの両方のアプリで利用できるようになる」というもので、日付は明言されなかった。

シェアサイクル市場に唯一残った「Vélib'」

パリでは現在までに、Gobee Bike、oBike、Ofo、Oribiky、Donkey Republic、Mobikeが相次いで撤退。現在「ドックレス」の自転車サービスはない。自治体が出資する「Vélib'」が、今もメトロポール・デュ・グラン・パリ全域でシェアサイクルサービスを提供する唯一のサービスとなった。

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