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【講演メモ】新型コロナウイルスの感染拡大を受けた熊本県内乗合バス事業者の対応について(4月24日)

2020年4月24日(金)にオンライン開催された「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム −新型コロナウイルスによる交通崩壊を止めろ−」より、地域の5社のバス事業者の共同経営という新しい試みで注目されている、熊本都市バス高田社長のご講演をメモとして書き起こしました。サクラマチ クマモトの開業以降バス利用者が増えつつあった状況にコロナ禍が直撃したことがよくわかります。実際の講演は以下のYouTubeからご覧になれます。伊藤はイベント主催者の一人ですが、このメモは非公式なものであることをご理解ください。(伊藤昌毅・孕石直子)


『新型コロナウイルスの感染拡大を受けた熊本県内乗合バス事業者の対応について』

高田晋(熊本都市バス株式会社 代表取締役社長・共同経営準備室室長)

1. 熊本県内の路線バス事業者

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熊本には複数のバス事業者があり、現在共同経営を模索している。

九州産交: 県内の都市圏
産交バス: 県内のローカルバス
熊本電鉄バス: 熊本都市圏北部
熊本バス: 熊本都市圏の南部
熊本都市バス: 市内のみ

この5社で県内約75,000人の移動を支えている。

2. 熊本都市バス 会社紹介

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熊本都市バスは若い会社。公から民へという動きがあった時代に、熊本市営バスを引き継ぎ生まれた。株主は熊本県内のバス会社3社で、市からの出資はない。市営バス路線の継承だけでなく、各社の調整と熊本都市圏のバス網再編のけん引的役割も期待されている。

3. 共同経営準備室

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共同経営準備に至った背景は、利用者の減少と乗務員不足。

ピーク時の昭和40年代には1億人以上の利用者があったが、平成30年には27,00万人程度と4分の1にまで減少、経営が厳しくなっている。加えて平成28年に熊本地震が起き、それを契機に乗務員不足が顕在化(平成27年~28年にかけて90人減少)した。この乗務員不足が続くと500万人以上の人の足に影響する。その危機感を各社が共有し、現在、熊本都市バス内部に8名で構成された共同経営準備室が置かれている。

4. 直近の輸送人員の状況

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便数(赤)は乗務員不足で前年比95%前後。

輸送人員は8月~2月にかけては好調で前年よりも多かった。これは9月にサクラマチ クマモトがオープンした(熊本城そばの九州産交グループが所有するバスターミナルを含むビルが再開発事業によって一新した)ことにある。地下1階・地上15階の商業所や住宅、店舗、熊本市が設置した県内最大の施設(熊本城ホール)が9月~11月にかけて順次オープンしていった。それがコロナが出始めた2月頃から急変、直近の4月1日~20日は前年比54%まで輸送人員が減少した。

5. 現在までの新型コロナウイルスに対する対応

・感染予防対策

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直近では上記に加えて運転席にビニールカバーを下げている。共同経営準備室で各社の状況を把握しながら進めている。

・利用者や行政への働きかけ

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5社で3月19日には熊本市長に、4月7日には熊本県知事に要望書を提出した。
現在、路面電車の朝の密を避けるため、貸切バスの臨時便を出して支援しているほか、余っている貸切バスの運転手を乗務員不足の他社に出向させ業務を振り替えるなどの措置を検討している。

6. 熊本市・熊本県に提出した要望

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乗客が減って経営が厳しくとも、路線バスはその性格上運休が難しい。運行継続のため:
補助制度を現行の事前算定(4月に年度分を決定し3月に清算しない)から実績算定へ変更要望(熊本市)。
・運行に必要な費用の算出根拠となる平均ブロック単価の引き上げ要望(熊本県)。

7. アフターコロナの移動促進

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サクラマチ クマモトのオープンに合わせおこなった熊本県内バス・電車無料の日は大盛況だった。アフターコロナの全国的な公共交通利用促進に生かしてほしい。

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