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【講演メモ】イーグルバス株式会社の現状報告(4月24日)

2020年4月24日(金)にオンライン開催された「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム −新型コロナウイルスによる交通崩壊を止めろ−」より、交通事業者の現状が伝わる、イーグルバス谷島社長のご講演をメモとして書き起こしました。様々な路線の現状を、利用人数の変化なども示しながら説明されており、今何が起きているかを具体的に知ることが出来ます。実際の講演は以下のYouTubeからご覧になれます。伊藤はイベント主催者の一人ですが、このメモは非公式なものであることをご理解ください。(伊藤昌毅・孕石直子)

『イーグルバス株式会社の現状報告 』

谷島賢(イーグルバス株式会社 代表取締役社長)

今回の新型コロナウイルスのような出来事は、40年の社歴の中でも初めて。その中で何を思うか話したい。

1. 会社概要

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イーグルバスの歴史
1980年 福祉バスとして開始
     企業の送迎バス
2000年 観光バス(埼玉県川越の町おこしのための観光路線バス)参入
2003年 生活路線バス・高速バスに参入

バス事業の全ての形態を行っている。

2. 現在考えていること

4月7日 埼玉県を含む7都府県に緊急事態宣言発令
4月10日 緊急要請

緊急要請でバス事業は社会の安定の維持という観点から、適切な感染防止対策を講じたうえでの事業継続を要請されたが、バスには色々な種類があり、事業の種類によって温度差がある。

バス事業者としてやるべきことは3点あると考える。
1. 自社から感染者を出さない(そこから社内外に広まってしまうため)。そのために対策を行う。
2. 経営をどう行っていくか考える。
3. コロナ後について考える。(地域はどうなっているか、どう支える余力が残っているか。)

3. イーグルバスの現状

・バス事業の分類

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※ 貸し切りバスには観光バスだけでなく送迎バスもある。特定とはスクールバスなど客の範囲・対象が定められたもの。

・貸切観光・送迎バスの状況

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観光バスは2月から影響を受け、3月は全面キャンセル。4月の稼働もほぼゼロ。一方送迎バスは状況が異なる。企業・工場の送迎バスは、輸送する社員の密を避けるために増車し稼働率が上がっているものもある。学校向けのバスなどは休校により稼働率が下がっている。結果、全体で3割ほどの減。

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貸切送迎バスの中で、大学は現在ほぼゼロ。しかし企業では稼働率が上がっている。コロナ禍で全ての稼働率が下がっているわけではない。

・乗合バスの状況

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観光路線の小江戸巡回バス(一番左)の乗車人員は、4月の時点では前年同月比5%と急激な減少。現在は運休に踏み切った。この路線は街づくりの一環として観光客を生活路線に導入するモデルを作ってきたものだが、観光客は現在政府の外出自粛要請により厳しい減少にある。その一方で生活路線は支え続けなければならないのが会社としては矛盾を感じるところ。一般の生活路線も3月頃から急な影響が出、4月は約70%運行率が落ちている状況。

・乗合 - 観光路線では

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観光路線バスの小江戸巡回バスを細かく見ると、ピーク(赤い丸)が3月の3連休の気が緩んだときに起きている。その後緊急事態宣言発出で急激に利用者数が減少した。すぐに運休しようと思ったが手続き上一週間かかった。

・乗合 - 大型商業施設がある路線では

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生活路線の中でも大型の集客施設がある路線を見ると、3月の中旬までは少しずつ下がりながらも維持していた。その後急激に落ちている部分は土日。土日に客を集める大型施設は如実に影響が出ている。加えて一般の利用者も減り右肩下がりに利用者が減っている。

・乗合 - 過疎地域の路線では

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過疎地域の路線のグラフはぎくしゃくしているが、下がっている部分は土日。土日に観光客を呼んで維持をしようというのが当社のモデルだが、外出自粛で土日の利用人数が減少し、全体的にも右肩下がりで減少している。

・乗合 - 空港連絡線では

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川越から羽田空港まで運行の空港路線バスについて。3社共同運航をしているため、当社の一存で止めることはできない。4月6日に内1社から1便減便させて欲しいとの申し出あり、その後利用者が継続的に減少し、3社で協議をして4月21日から全便運休。

・乗合 - 都市間夜行便では

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川越と都内、京都、大阪を結んでいる都市間高速バスについて。当社のバスは非常に稼働率がいいのだが、それがコロナの影響でグラフの真ん中あたりからがたんと落ちている。その後メディアから「大丈夫」などの報道があり緩んだ時期があったが、以降右肩下がり。切れている部分は、「密で運行するのはまずい」と判断し平日運休を開始したため。その後ピークがあるが、これは他社が一斉に運行をやめたために残されたバスに集中したため。これは非常に危険だと判断し、4月13日から全便運休した。

・全体的な運行情報

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現状、高速路線、空港線、観光路線は全便運休。観光バスも稼働率はゼロ。生活路線は大型施設など一部減便はありながらも支えている。

4. 現場の課題と要望inコロナ禍

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「適切な感染防止対策」にガイドラインを出してもらいたい

「適切な感染防止対策を講じて事業を継続」と要請されているが、「適切な感染防止対策」とは何か。我々には何が適切かというのが分からない。メディアの情報は日々変わり、どこまでやればいいのか分からないため、手探りでやっている。我々の要望としてはガイドラインを出してもらいたい。

また、公共交通という立場では乗車の制限というのはなかなかできない。当社では運転士の後ろの席の使用禁止をお願いしているが、当初社内で本当にそういう制限ができるのか、という議論があった。それから運転士から、マスクをしていない乗客とのトラブルが報告されている。アメリカなどの諸外国ではマスクをしていない乗客を拒否できる。そうした「公共交通の使用制限」についてもガイドラインを出してもらいたい。

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新たなコストがかかっていることも知って欲しい。現在マスク、手袋、消毒液、運転席まわりのカバー、窓の開閉など行っているが、今マスクや消毒液は入手が困難。今はなんとかなっているが、今後も入手し続けられるのか不安。それらは普段はかからないコストであり、決して収益事業ではないバス事業に新たなコストがかかっていることも知って欲しい。

新型コロナウイルスに合わせて運行計画を柔軟に行わなければならないのに、休止や減便が、制度や規則上やりづらいのも不便。

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感染予防の次に我々が考えるべきことは事業の継続。金融支援など考えなければならない。

ピンチをチャンスに
例えば当社は毎週月曜日に各部門の責任者が集まる月曜会議というものをやっているが、現在はZoomでそれを行っている。もっと早くやるべきだった。リモートでできれば4営業所までの移動が節約できる。社員も外出できない時間を使ってITの研修など実施をしている。こういう時期だからこそIT化をすすめていく。

5. アフター・コロナ

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コロナが去った後どんな世界が待っているのか、路線が消えてしまう可能性もあるのではないかと思っている。今までは赤字路線を維持するために観光バスや送迎バスなど黒字の事業を止めて運転手を投入してきたが、それができなくなると赤字の路線が消えてしまう大きな懸念がある。

一方で、V字回復するには観光客を集めることが一番だと思っている。この写真は本来当社が4月から投入するはずだった日本で初めてのボンネット型電気バス。昨日撮影を行ったが、このように人が全くいない川越は初めて。地域の人とアフター・コロナについて十分話し合い、すぐにV字回復できるような施策をやっていきたい。コロナは必ずいつか終わる。その後息切れをしてしまうのでなく、そこからスタートできるような体制を整えていくのが大事である。

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