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中日ドラゴンズ近未来野手構想

はじめに


2021のドラフト会議が終了しました。

中日ドラゴンズは指名した6選手のうち5人が野手、3人が右打ちの大学生外野手という、球団史に類を見ないインパクトのある指名となりました。今季のドラゴンズが両翼を筆頭に攻撃力が壊滅状態にあり、球界トップの防御率を誇る投手陣を擁しながら最下位争いに甘んじていることを鑑みればその意図は充分に感じ取ることができます。

ただ、内野→外野のコンバートと比較して外野→内野のコンバートは難易度が高いこと、ドラゴンズには近い年齢帯に右打ちの外野手や外野手兼任の選手が少なくないことを考えると、リスクのある指名には間違いありません。個人的にはドラフトは良い選手を揃えることが最も重要であり、デプスは後から整理することも可能かなと思うので然程気にしていませんが。

今季で遂に10年優勝から遠ざかり、10年間で8度のBクラスと球団史上最悪の低迷が続くドラゴンズ。近年のドラフトで獲得した高卒野手と今回のドラフトで獲得した大卒野手の年齢がピークに来る頃には優勝を狙えるチームになってほしいものです。そこで、2025年を目安に主観で野手陣の再構築を構想していきます。※年齢は2025年開幕時点


2025年に戦力となっていてほしい選手たち


捕手

木下拓哉(33)

昨季後半にブレイクした木下は6年目の今季遂に正捕手に定着。攻守で優れた才能を開花させリード面も向上した今季は、リーグ内でも総合的にトップクラスの捕手となり、チームの野手ではMVPと言える働きを見せた。33歳となる2025年も肩の強さと速球に振りまけない打撃を維持していれば依然として正捕手である可能性は高く、円熟期に差し掛かる扇の要として若いチームを引っ張ってほしい。

石橋康太(24) モデル:里崎智也

今季ファームで僅か99打席で5本塁打、OPS.774を記録したプロスペクト。ヘッドの利く打撃を武器に高め、速球に対応する。木下の次の正捕手候補の本命であり、2025年には少なくとも一軍定着、あわよくば正捕手を掴んでいてほしい。3BやOFの可能性もあるが、守備面でのスペックの高さを考慮すると郡司がコンバートする方が無難か。


味谷大誠(21) モデル:梅野隆太郎?

最大の強みである強肩に加え、脚力とシャープな打撃も魅力。3学年差の石橋ら他の捕手に対しては走力と左打ちである稀少性で差別化が可能か。2025年時点ではファームの正捕手として機会を積めていれば及第点。


内野手

高橋周平(31)

長打増を目論み打撃改造に着手した今季は故障を抱えながらの出場も多かったようで、苦しいシーズンとなった。今季後半の取り組みや確実性を重視する立浪和義の監督就任を見るに、来季以降は再びアベレージ方面に舵を切ることが想像できる。そもそも昨季までの打撃でもコーナーポジションとして長打は物足りない水準であり、近い将来石川昂弥との共存は必須であるため、高橋には再び2Bを主戦場にすることを求めたい。

京田陽太(30)

圧倒的な守備力と体力を武器に物足りない打撃をカバーする内野の要。今季は打撃不振でプロ入り後初の二軍降格を経験。再昇格以降改善の兆しは見せたが、長打が減少し総合的なスタッツとしては例年通り物足りない数字に留まった。身体能力の低下により守備力が落ちると想定される2025年時点で打撃に改善が見られなければ、正遊撃手の座は土田や根尾に取って代わられる可能性も大いにある。本来は打撃の才能もあるのは明らかであり、パンチャーとしての才能開花をもう少しの間は信じたいが、長打軽視の立浪新監督の指導と相性が不安である。

石川昂弥(23) モデル:坂本勇人

将来打線の中軸を担うことを宿命付けられたトッププロスペクト。天才的な内角捌きはさながら清原和博。今季は死球による骨折で後半戦を棒に振ったが、来季には本格的な一軍戦力化、2023年にレギュラー獲りはある程度計算しても良いのではないか。2025年には3or4番として新生ドラゴンズの象徴となってほしい。来季は出場機会を優先して外野を守るのも手である。25年には3Bか、高橋との兼ね合い次第で2Bとなるか。25本塁打より先に規定3割に到達しそうに見えるが、3割30本を必ず達成してほしい。

土田龍空(22) モデル:京田陽太

1年目ながら攻守に非凡な力を見せた今季は、将来のレギュラー獲りを予感させるには充分なルーキーイヤーとなった。ダイナミックな守備と強気な性格は京田の後釜に相応しく、5年目となる2025年にはレギュラーを伺えると順調だが、打撃スタイルの被る京田とのレギュラー共存はあまり考えたくない。京田→土田でスムーズにSSの世代交代を実現してほしい。

星野真生(21) モデル:川島慶三?

総合力の高い地元枠内野手。2025年時点で一軍戦力になっている可能性は高くないが、味谷と同じく二軍でレギュラーとして機会を積めていればまずまず順調か。右打者である時点でポジションの被る京田土田根尾と差別化は一つできている。

石垣雅海(26) モデル:陽川尚将

パワフルさと走力の両立が魅力。昨季二軍で打率.372、OPS.988を記録し今季はキャンプで与田監督からも名前が挙がるなどブレイクを期待されたが、二軍で打率.226、OPS.693と苦しんだ。特に280打席で102三振23四球とアプローチ面の課題を露呈。今季初の一軍登録が10月7日と戦力になれなかった。昨季は両翼も守りUT化も目論んだが、近い年齢帯の右打ち外野手が3人入団したことを考えても内野に留まる方向が得策か。ただ3Bで高橋石川を上回ることは難しく、二遊で勝負したい。京田土田根尾と異なる右のパワーヒッターという特性で差別化を図ることができるか。

高松渡(25) モデル:周東佑京

今季一軍フル帯同を果たした快速内野手。圧倒的な走力を見せるシーンやコンタクトセンスを見せる試合もあった一方で、2BOF共に不安の大きい守備力や、度々牽制死する洗練度の低さも露呈した。ひとまず近年のプロ野球のトレンドである代走の切り札が目標となるが、盗塁成功率の向上と守備の安定は必須である。

ビシエド(36)

ここ2年は物足りない成績に終わり今オフの去就が注目されるが、2025年時点で残留していればすでに多く外国人枠を外れており再び貴重な戦力となるか。積極的なアプローチで粗さの少ないスタイルを考慮すると、5番1Bをメインに代打や指名打者も含めて打棒を発揮してくれる期待は持てる。

外野手

ブライト健太(25) モデル:秋山幸二

近年中日にいなかったロマン溢れるアスリート型スラッガー。高い弾道はナゴヤドーム向き。大卒4年目となる2025年には必ずレギュラーを獲得していてほしい。思い切りの良さと走力を活かした1番打者、コアとして3or4番打者、長打力を活かした6番打者と様々な想定ができる。速球キラーとなっての石川と共に本塁打量産を期待。

岡林勇希(23) モデル:近本光司

速球にヘッドの利くアスリート型アベレージヒッター。将来のリードオフマンとしての姿は容易に想像できるが、チーム内の他の1番候補と比較して器用な打撃が期待できるため、2番打者の適性もあるのではないか。ハイボールヒッターの片鱗もチームには貴重な傾向である。

鵜飼航丞(25) モデル:ブランドン・レアード?

地元出身のスラッガー。大学時代のスタッツはドラフト順位ほど高くないが、アッパー気味なスイングから繰り出させる豪快な打球は魅力満点。フォームに大きな欠陥は見当たらず、きっかけ一つでの才能開花に期待できる。セ・リーグのDH導入が噂され外国人野手用に必ずしも1Bを空けなくても良くなる可能性があるため、LFだけでなく1Bオプションも作っておきたい。

福元悠真(25) モデル:中川圭太?

桂、滝野、橋本に続く大阪商業大学出身選手。外野に同タイプの同年代も多い中、どのようにチーム内で突き抜けて行くか。大学時代は166打数14三振とコンタクト面の才能を匂わせるスタッツが残っており、ライバルは外野コンバートした郡司となる可能性も。

伊藤康祐(25) モデル:松本剛

中京大中京時代鵜飼と共に甲子園に出場し、一足先に高卒で入団。来季辺りからは本格的に一軍戦力となり、4年間の差を見せたい。今季は二軍で出塁率.399,OPS.800とアプローチ面を強みに一軍で通用する可能性を示した。しかし一軍では17打数1安打と一軍の壁を認識。まずは得意そうな対左で.250前後の打率を残せば、守備走塁をメインに一軍定着も可能か。

三好大倫(27) モデル:藤井淳志

ルーキーイヤーの今季はキャンプで稲葉日本代表監督にも名指しで称賛されるなど期待されたが、開幕すると二軍成績は低迷。後半やや持ち直したが、一軍昇格は果たせなかった。来季は身体能力を発揮して一軍レベルで強みを見せ、将来像を確立したい。

滝野要(28) モデル:若林晃弘

今季前半戦は一軍帯同し、代打代走守備固めとマルチな起用をされた。速球対応に優れた打者になる可能性を感じさせる打撃に加えて1B3Bと内野コーナーポジションの守備が案外上手く、外野守備が向上すれば若林のようなゲーム終盤に貴重な控え選手となる可能性も。

ユーティリティ

郡司裕也(27) モデル:中村悠平

今季は二軍で打率.225、OPS.678と苦しみながらも一軍では15打席で6安打2四球。少ない打席数で実戦向きの打撃を披露した。優れた野球脳とコンタクト力を兼ね備える打撃は仁村、井端、平田の系譜。2025年には2、5、6番辺りを担えるか。守備面でも非凡な野球脳を見せるリードは魅力的であるが、木下と石橋の優秀な2人に挟まれた年齢を考慮するとコンバートも視野に入る。捕手を完全には断念せずに1B3BLFRFを兼任してほしい。

根尾昂(24) モデル:大城滉二

高校球界のスターとして鳴り物入りで入団するも、プロ入りして最初の3年間は苦しみに満ちたものに。今季前半は半ば強引に一軍での打席を投資されたが、172打席でOPS.473ときっかけを掴めず。外野守備で強みを作ったが、本人はSSに強いこだわりを見せる。センターラインを含むUTとして一軍に必要な戦力としての段階を経て、2025年までには打撃面でも強みを作り、チームの弱みとなるポジションに飛び込みレギュラー奪取を。


野手が育つ球団となるために


中日ドラゴンズは最後に20本塁打に到達した生え抜き選手が2010年の森野、30本塁打が2006年の福留まで遡る打者の育たない球団です。複数ある原因を一つ一つ着実にクリアしてほしいです。

原因① 投手重視のドラフト戦略

中日は1973年から2020年までの間ドラフト1位、2位の両方で野手を獲得した年はなく(自由獲得枠などによる事実上の例外あり)、投手を重視したドラフト戦略を取ってきました。

もちろんナゴヤドームという投手有利の環境をバックにした守りの野球を理想に掲げるのは理解できます。黄金期を築いた落合政権の主力投手はやはり上位指名の選手が多く、成果を上げたことも事実です。

ただ、近年のプロ野球は野手力でペナントを制する時代であり、中日の前時代的なドラフト戦略がチームの攻撃力、ひいてはチーム力を低迷させたと感じます。今年の「超・野手ドラフト」はその反省を感じさせるものであり、チーム史のターニングポイントとなると期待します。

そして、今回ドラフトで指名した大卒野手は石川や石橋、岡林、根尾といった既存のプロスペクト野手との年齢が近いことも特徴です。FA選手や大物外国人の獲得を期待できないチームは、近い年齢帯に有望な選手を重ねて獲得する手法が有効です。広島が88年世代の會澤、89年世代の丸と安部を高卒で確保したところにそれぞれ89年世代の菊池を大卒で、田中を社会人卒で獲得しチームの軸となるセンターラインを形成し3連覇を達成したことは記憶に新しく、理想的なモデルケースです。中日も99〜01年世代を集めて黄金期再来の軸とするのも手ではないでしょうか。

また、最適解の指名を放棄したように見えてしまう地元枠指名も考え直してほしいです。

原因②打者地獄のナゴヤドーム

中日の本拠地ナゴヤドームはリーグダントツの超投高打低球場です。ナゴヤドームで開催される試合は異様な雰囲気が漂い、前の試合まで爆発していた巨人や広島の強力打線がカードを通して沈黙することも珍しくありません。普段ナゴヤドームの試合中継を眺めていれば、この球場では普通の野球が繰り広げられないことが見て取れます。

当然この環境は野手育成に強い逆風を吹かせ、平田や高橋周平、福田、高橋光信といった優れた才能を物足りないスケール感に留まらせて来ました。平田や高橋周平はナゴヤドームの難しさを口にしたこともあります。後に基準違反球と発覚するボールを統一球と称して12球団で使用した2011,12年以降、球界全体として中々スケールの大きな打者がブレイクしなかった過去からも分かるように、極端な打低環境は打者の成長を鈍らせます。

石川とブライトを筆頭に将来有望なスラッガー候補を保有した今こそ、ナゴヤドームにHRテラスを導入してほしいと思います。

原因③二軍の属するウエスタンリーグの性質

若手野手は基本的に、まず二軍で好成績を残すことが一軍定着への登竜門となります。また、二軍で成功体験を積む中で実力を付けていきます。

ただ、ウエスタンリーグはソフトバンク、阪神、オリックスと優秀な若手投手を多く保有する球団が属しており、一軍レベルの投手との対戦が多くなります。そうしたレベルを体感できるのは悪いことではないのでしょうが、成長段階に合わせたレベルとは言えない場合がほとんどです。難易度の高すぎる環境が成長の妨げになっている可能性は濃厚で、現にウエスタンリーグに所属する中日、ソフトバンク、阪神、オリックスは高卒野手が一軍でレギュラーを獲るケースが明らかに少ない傾向にあります。二軍の腕の見せどころである高卒野手が育たないというのは、やはり成長段階と環境レベルが合っていないことの証拠ではないでしょうか。

中日も三軍を作ってプロ入り後初期段階に相応しい相手と対戦するのが理想ではあります。ただそれは難しいでしょうから、現実味のある方策としてはまずナゴヤドームと同じ規格であるナゴヤ球場のフィールドを狭くすることが比較的手軽でしょうか。


思い描くオーダー


パターン①

8岡林

7郡司

5石川

3外国人

4高橋

9ブライト

2石橋

6京田

俊足巧打の岡林が1番で3、4番には最強型が並び、コンタクトに長けた2、5番に挟まれる。下位には長打力のある選手が並ぶ。この場合投手に外国人枠を4枠割くことも可能で、チームカルチャーである投手王国の維持も比較的容易か。野球脳と嫌らしい打力を兼ね備える郡司の2番起用がポイント。

パターン②

8ブライト

9岡林

4石川

7外国人

3外国人(ビシエド?)

5高橋

2木下

6土田

ブライトを核弾頭として1番に据え、アベレージヒッター岡林で上位のバランスを整える。LFの外国人が左打者ならば綺麗なジグザグ打線が形成される。高橋と石川、岡林とブライトの守備位置がどうなるか分からないのでそれぞれパターン①と入れ替えた。

パターン③

6京田

9外国人

8ブライト

5石川

0外国人

3高橋

7鵜飼

2郡司

4根尾

指名打者制の導入を仮定し、守備適性自体はコーナーポジションにありそうな高橋の1Bを想定。明らかに強固な内野守備陣が誕生した。OPS映えするブライト、文句なしの最強打者石川の3、4番は黄金期広島の丸鈴木を彷彿とさせる。


終わりに


今回、今季の低迷の原因が攻撃力にあること、投手の状態は一年単位で乱高下するため、数年後の予測をすることは困難であることを理由に野手をテーマにしました。

初年度時点では決して悪い部類にはなかった与田政権の采配を年々狂わせ、辞任に追い込んでしまった原因は野手陣にあります。今季の大野や柳、小笠原らの好投見殺しによる勝ち星の伸び悩み、タイトな展開が相次ぐことに起因する又吉や祖父江の登板過多はファンにとって辛い光景でした。攻撃力の壊滅が奮闘する投手陣をも追い込む様はもう見たくありません。特にFA権を行使せず残留してくれた大野を筆頭に、チームを力強く引っ張る投手陣には必ず近い将来、優勝という形で報いてほしいと思います。

近年にもチーム打率やチームUZRがリーグトップを記録する年はあり、ある程度の野手力を見せるシーズンはありました。ただ、優勝するためには長打力を中心とした更に上の野手力が必須に違いありません。若手野手陣には優勝できる野手力を作り上げてほしい。また、高木政権から与田政権にかけて、主力野手として低迷するチームを支えた大島、平田、福田、堂上、阿部らには、なんとか戦力として歓喜の輪に加わってほしいとも思います。

まずは2022シーズン、礎となる一年になることを期待します。

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