見出し画像

ザーゴを諦めても進化を諦めるな

ザーゴ解任論

名古屋に負けたことで今季の優勝どころか残留まで危うくなってきたアントラーズ。
こうなると当然ながら監督の進退問題が出てくるのは当然だ。
個人的にはザーゴは愚将でもなければ名将でもないと思っている。
おそらく、特定の条件下であればそれなりに勝てるチームにできる監督だ。
ブラジル二部での優勝や日本でのスタッツを見れば彼なりの方法論が数字に反映されていることはわかる。
ただ、日本という環境や鹿島の現有戦力でタイトルを獲得する指導力は残念ながら持っていなかったのだろう。
優勝の可能性が潰えるだけならまだしも、残留すら危ういのではと思わせるサッカーが続く今季。
そして、優勝争いどころかスタイルの定着も疑わしくなってきた今、監督交代は現実的になってきたといえるだろう。

なぜ一足飛びにザーゴだったのか

後出しと言われるかもしれないが、私は改革の一歩目がなぜザーゴだったのか一年目から疑問に思っていた。
ザーゴはどちらかといえば速攻、即時奪回、ボール保持を志向する監督だ。
Jで言えばフロンターレやマリノスのように相手陣内でのプレータイムを長くしたいタイプ。
フィッカデンティやロティーナのようにブロック守備を基本とするタイプではない。
表向きには前任の大岩さんにはできなかった主導権を握るサッカー、脱属人的サッカーをする人材としてザーゴが選ばれたとされる。
主力の海外移籍が増えたための脱属人。競争力が上がっているJリーグで優勝するために一年通して安定したサッカーをするための主導権の確保。
なるほど、一定の筋は通っているように思える。

ただ、私からするとこの飛躍に問題があったように思えるのだ。
ザーゴの志向するサッカーを成立させるためには、GK含めたビルドアップのためのポジショニング、パス&トラップの正確性、効率的かつ機能的なプレッシング、トランジション能力が求められる。
これに付随するあらゆる要素が高いレベルで組み合って初めて真価を発揮する。
いわば、高難度のハイリスクハイリターンなフットボールだ。
故に、これまで選手の特性に依存し、誤魔化してきた諸々を一人の監督を呼んだだけで変えるのはやや高望みと言えた。
攻撃的なサッカーを志向するようになったマリノスはポステコグルーの前にモンバエルツが基本的なポジショナルプレーを根付かせる役割を果たした。
いわば、ポジショナルプレーの土台があっての近年のスタイルな訳だ。
いきなり現在のスタイルになったわけではない。
それはフロンターレも同じでクラブとして攻撃的なサッカーを求めてきた歴史があるからこそ、近年の爆発的な得点力という成功がある。
それらを鑑みれば、はっきり言って、鹿島は大岩さんの時代から一気に変えようとし過ぎだと思えた。

鹿島のイメージといえば、堅守速攻と言われることが多い。
しかし、近年の鹿島は本当に堅守速攻を確立できていただろうか。
問題の本質はここにある気がしている。
つまり、フロントがチームの評価を見誤り、安定して勝てないのは堅守速攻だから。これじゃ優勝できないという間違った認識から主導権を握る=ボールを保持するという論理展開となってしまったのではないか。
実際は、ビルドアップもプレッシングもスプリントも誤魔化したまま、鈴木優磨や金崎、柴崎、スンテ、昌子、セルジーニョ、西等々の個人の頑張りがチームの命運を左右するようなサッカーだった。
できていないことのほうが多いチームだった。
そんなチームを変えるには、段階を踏むべきであろう。
順序立てたプロセスを考えるなら、厳格な44ブロックの追求とビルドアップの整備ができる監督を呼んでチームに根付かせた後に、敵陣内でのプレー率向上を目指すべきだったんじゃないだろうか。
今の鹿島はあらゆることが中途半端に思える。


進化を諦めるな

勘違いすべきでないことは改革を諦めてはいけないということだ。
主導権を握ること、脱属人的サッカーを目指すこと自体は間違っていないのである。
というのも、記憶が確かなら各リーグの上位勢というのは概ねポゼッション力が高いという統計があるからだ(なかったらすみません)。
支配率ではなく、ボールを何本連続で繋げたかというボールを繋ぐ力が高いチームが上位になる傾向がある(ある意味では当たり前で下位チームはパスを繋ぐ能力が低い)。
それを考えるとポゼッション力の向上は避けては通れないし、リーグ優勝のための安定した攻撃力の獲得もまた避けては通れない。
問題はそれをどのようなプロセスで実現するかである。
鹿島は欧州のビッグクラブではないのでお金で選手をごっそり入れ替えるのは難しい。
辛抱強く、徐々に求めるスタイルに適合した選手を集めるしかない。
その間にも主力は海外に移籍するだろうし、チームは上位であることも求められる。
そう考えると、長期的な強化プランを策定し、諸要素のレベルアップを段階的に達成していくしかないのではないだろうか。
一度に全部を手に入れるというのは、やや非現実的だし、わがままにも思える。

私のザーゴ評

最近のザーゴに対する私の認識は『なんちゃってポジショナルプレー』の監督だ。
型にはまった立ち位置を教えることはできるが、相手に合わせて立ち位置を変える機能性(自動性)をもたらすことはできていない気がする。
また、本来攻守一体となるべきポジショナルプレーで攻撃時のスタートの立ち位置のみにフォーカスして機能設計しているようにも感じられる。
レッドブル印の監督であるし、UEFAライセンス保持者なのでそんなことはありえないのに。
開幕から右肩下がりになるのも謎である。
一体、どうなっているのだろう。フットボールの闇は深い。

後任人事

私としては今すぐ監督を代えないと手遅れになる可能性もある気がしている。
広島戦や福岡戦までは悪いなりになんとか戦えてると思っていたし、名古屋戦もチーム状況を考えたら、前半は我慢できていると見ていた。
しかし、後半の二試合連続退場、レッド未遂、イエロー連発を見て、ザーゴの求心力や選手の士気が危機的状況にあるように感じられた。
開幕から右肩下がりにチームの調子が悪くなっているのも気になる。
はたして、このままピトゥカとカイキを待っていていいのだろうか。

後任はひとまず相馬さんにお願いをして、ザーゴプロジェクトの失敗を認めるところから再出発してはどうか。
ザーゴが駄目だったときのための保険として、魔境J2での天国と地獄を経験している相馬さんを呼んだのだろうし、残留だけを考えるならこの上ない人材だ。
今はとにかく、チームのリカバリーさせることを優先しないと再チャレンジすらできなくなりそうで心配である。
失敗することは悪いことではない。大事なのは適切なリカバリーである。

おわりに

ザーゴで成功するなら成功してほしいと思っている。が、それは叶わない情勢になってきた。
これからどうなるにせよ、降格だけはやめてほしいものだ。

ここから先は

0字

¥ 200

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?