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同じ映画なんじゃないか?

【この投稿のまとめ】

①「14歳の栞」と「花束みたいな恋をした」は同じジャンル。
②なぜなら、両作品とも「一般人のただの日常」を映像にしているから。
③だからこそ、この2つの作品には、みんな共感するし、たくさんの感想がわいてくる。
④ここからわかるのは、個別性があると思っている自分の人生も、意外とみんなと同じ。
⑤けど、この2つの作品が面白くて、感動するということは、私たちの人生も映画みたいに輝いているかもしれないということ。
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お時間ある方は・・

先日「14歳の栞」という映画をシネマロサさんで観てきました。
この作品は、ある中学校の2年6組総勢35人に全員密着するという斬新な内容から、SNS上でも大きな話題を集めています。
感想云々よりまず、頭の中にあった壮大な企画を、なんとか映像に残そうとした作り手の方々の姿勢に敬意を評したいです。
他にも、あのシーンはキュンとしたとか、あのシーンは昔の自分を見ているみたいだったとか…
巧みな編集によって、いくらでも感想が湧いてくるような作品に仕上がっているのが魅力のこの作品。
映画館を出た後の感覚が最近観たあの作品の時とそっくりだったんです。

「花束みたいな恋をした」です。
若者を中心に異例のヒットを記録した超話題作のため、ストーリーをつらつら書くことは不要ですよね。
では、この2作は何が共通しているのでしょうか。自分なりに考えてみた結果

「一般人のただの日常生活を描いている」

という点にあるのではないかという結論に至りました。

大前提いっておきたいのが、この表現は決してマイナスな意味をもっていません。

「花束みたいな恋をした」では、どこにでもいる男女が、どこにでもある恋愛をして、どこにでもありそうな終わりを迎えるというお話。
「14歳の栞」は、普通の中学生が、笑って、泣いて、恋をして、挫折して、それでも前を向いて、未来へと立ち向かっていくというお話です。
この2作品の登場人物は、日本一になれるような突出する才能を少なくとも作中の中では誰一人持っていません。
映画的なドラマティックな展開は期待できないのです。

だからこそ物語は「リアル」になります。
ここでの「リアル」は、私たちの生きる世界に「近い」というレベルでなく、「同じ」というレベルにまで達します。

例えば、「朝起きて歯磨きをする」「朝食にパンを食べる」
このような描写が作品に出てきても、私たちは特段「リアル」だなとか「共感するな」とか感じることはありません。
それらの行為が万人に共通するあたりまえの「日常」であると思い込んでいるからです。
この2作品に共感するということも、「朝食にパンを食べること」をリアルだと思うことと、さほど変わらないのではないでしょうか。
私はこのことに気づいたときとても悲しくなりました(笑)。

つまり、恋をして別れたり、友達と喧嘩したり、日々悩んだりすることの中にあるプロセスは、意外とみんな似通っているということです。
一見ドラマティックで個別性のあるようにみえる私たちの日常も、大きな視点で見れば他者と「同じ」である。
本能的に「人と違う」と思いたい人間にとって、このことを意識することは相当辛い作業です。
しかし、このまぎれもない悲しい事実をこの2作は静かに私たちに突きつけます。

ここまではマイナスな表現が続きました。
しかし、「自分が凡庸な一般人」だということをこの2作品は思い知らせる。ということを私は主張したいのではありません。
むしろ誰もの人生が「映画化」できるということをこの2作は教えてくれた気がするのです。

14歳の栞では、35人全員が悩み、葛藤し、それに立ち向かっていました。
「部活がしたい」「他人とうまく関わりたい」「好きな人に告白したい」
それらは、アベンジャーズなどが抱える「地球の危機から人類を救いたい」という悩みと比較すればどうでもいいことです。
しかし、私からすれば、それら全てに立ち向かう姿がアベンジャーズよりも輝いて見えました。

花束みたいな恋をしたでは、どこの誰だがわからない男女の恋愛の一部始終が描かれています。
平凡で、なんとなく先が読めるような感じでも、物語の中の二人はとても輝いていました。

私たちの人生も、普通で、周りと一緒で「劇的」な展開はないように感じるけど、
もしかしたら映画みたいに輝いているのかもしれない。

この2作に対して、たくさんの感想が湧いてくるということは、このことの証明なのかもしれません
自らのちっぽけな人生を再評価するきっかけになってくれる両作、合わせてみてみるとみなさんにも新たな発見があると思います。
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