映画_金の国 水の国
この映画は、異国情緒あふれる雰囲気が好きな人、国家間での思惑や政略のやり取りにワクワクする人、そして……現代社会や人間関係に少し疲弊している人にこそオススメしたい1本である。
前情報を何も入れずに、映画館へ足へ運んだ。
そして、気付いたら黒い帳が上がった。
最近見た映画の中では、イチニを争うほど好きになった瞬間だった。
あらすじをざっくり。
内容としては単純明快。
仲の悪い国の人間が出会い、二人を中心に動いていく。
そんなお話。
たまに見る題材ではある。
でも、それが素敵な絵と音楽と優しい物語でまとまっていた。
私が感動したのは、登場人物に各々しっかりと考えがあり、それに一本筋が通っていること。
例えば、世界征服をしたい悪者がいて。
その理由が突拍子もないものであれば、ただ便宜上悪役を作りたかったのだろうな、と思ってしまう。
勿論、物語を面白くするために必要なのはわかっている。
その必要な部品にしっかり肉付けしていると共に、いわゆるモブキャラみたいな人物にも想いや感情を乗せている部分に、感銘を受けた。
更に言うと、心が疲れない作品だったのが多い。
歳を重ねるにつれて、誰かを陥れて悲しみや絶望の淵に落とし、そこから這い上がっていく作品が少々疲れるようになってきた。なんと言うか、作品を見るためのエネルギーが必要。「よし、見るぞ!」という心の準備が出来ていなければ見れない、そんな状態になっている。
この作品には、個人的にだが、それを感じなかった。
先述した通り、国家間での思惑はある。
もともと仲の悪い国。何故仲が悪いのか、どうして戦争をしたのか。そんな背景を感じさせながら、各々の考えで結論を出して行動している。どの人物の行動・考えも一方から見れば、正義なのである。
2時間前後の短い時間の中、登場人物の考えがわかるように描かれているため、納得させられながら見入ってしまった。
ただ、私は見ながら「どうしてそう発言・提案したのか」という部分を考えてしまう癖があり、気付いたら一場面を空見してしまい、全体を完全に把握は出来なかった。そのため、もう一度見たい。
というか、もう一度見ると、また違った視点で楽しめるだろうな、と思った。
新海誠作品やクリストファー・ノーラン作品のような、とてつもなく伏線があるわけではない。至って穏やかだと思う。
とてつもなく描写されているわけではないが、それが逆に人物を深堀する余白を与えてくれているような気がして、心地よかった。
私は気に入った作品は、原作もチェックしたくなる性分である。
そのため、上映後に漫画をすぐに買った。そして、帰宅後、読んだ。
結論から言うと、ほとんど同じ内容だったが。が、やはり違う部分もある。
何故変えたのかを考えるのも、メタ的な楽しみ方で好きだ。
また、漫画では表現しきれない部分を、映画ではとてつもなく丁寧に表現していることも確認できた。
どちらが先の方が良いか、と言われると、何とも言えないかもしれない。漫画先の映画後の方が、感動は大きいかもしれない。
漫画一冊を映画一本にしているため、表現の幅は映画の方が広がるのでは?と思ったりもする。と同時に、あの内容を一冊に凝縮している凄さも感じる。
物語にフォーカスしてきたが、映像や音楽も素晴らしかった。
音楽は、まあ、聴いてくれと言うしかない。
映像に関しては、勝手な偏見だが、女性監督ということもあり、男性では表現しないだろうな……という部分まで精密に描かれていて、楽しかった。色鮮やかな部分もそうだが、そのシーンで身に着けていたものを風で飛ばす部分を描くか?と感じた。否定的ではなく、素晴らしいという意味。
漫画で確認したが、描写されていない。そして、そのシーンに必要ではない。なのに描いた。個人的には、描いた方がイイと思った。
言語化出来ないが、それがあるなしでは何と言うか、情景の大きさというか、心の動きというか、そんな部分まで感じられるような気がして、恐ろしさすら覚えた。
と、まあ、自由にあれやこれやと書いてきたが、少しでも興味を持った方は是非映画館へ足へ運んでほしい。ラブストーリーが大丈夫な人は、見て損はないと思う。
予定調和的な部分もあるが、それも私は楽しめた。
上映中、また見に行こうと心に決めている。
素敵な金の国と水の国のその後も、見たいものである。
というところで、今回はこのへんで。
また次回、お会いしましょう。
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