![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/85396083/rectangle_large_type_2_e117c4b561cfac7809830dee889d4c5c.png?width=800)
傷一つない真実
花が一輪咲いた
薄闇の帷の下で
冷め始めた風が吹いていた
花は寄る辺なく揺れることしか知らず
屈託を面に出すことさえ知らない
小さな真実を灯すように
夜を過ごす白い花には夢がない
花は眠れずに目を閉じて沈んでいる
酷薄な空の蒼に染まるように
終わりのときを知るころに
瑞々しさを湛えて深く
翠を濃くして碧く光り出す
薄闇に燐光して
俯くことをやめて
真っすぐに顔を上げて
ただ一つの光だけを見つめている
遠く遠く真夏でさえ遮れない程
冷たく澄んでいる
すべての子どもたちが
失えなかった瞳の眩しさ
誰もが持っていた
いつか見失った光
真っすぐに
ただ真っすぐだったころの
傷一つない真実