佐渡裕指揮 新日本フィルwith角野隼斗@アクロス福岡シンフォニーホール



はじめに

2024年5月21日、アクロス福岡シンフォニーホールで行われた、表題のコンサートに行きました。これはその備忘を兼ねた、とりとめのない感想です。

プログラム

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲1番
チャイコフスキー:交響曲5番

プレトーク


こんばんは、佐渡裕です。

大和証券プレゼンツ、佐渡裕指揮新日本フィルハーモニー交響楽団with角野隼斗、全部で11公演、今日の福岡が初日で、これから九州・山口・東京・東北・北陸までまわります。

お蔭さまで全公演完売したということで。僕は今年で新日本フィルの音楽監督に就任して2年目になるのですが、これは楽団にとっても大きなことだと思っています。

それで今日はソリスト角野くん

角野くんの世代には、角野くんをはじめ素晴らしいピアニストがたくさん出てきていますが、その中でも彼は素晴らしいセンスの持ち主で

東大出身というのもですね、東大ですよ?

僕とはタイプが違う。おそらくあまり食べないんでしょうね。

角野くん、この協奏曲を完璧に弾きこなすテクニックももちろんですが、パッションも素晴らしい。迫力ある演奏で。

チャイコフスキーのこのピアノ協奏曲、チャイコフスキーもすごいですね、ピアノというオケにはない楽器を加えて、オケと融合させたり争わせたりする曲を作る。

それからチャイコフスキー交響曲第5番。僕は子供のころ、レコードを聴いて育ったんですが、クラシックと言えばまずドイツの音楽、みなさんもそこから入るのではないでしょうか。モーツァルトやベートーヴェン、いわゆるドイツ音楽ですね、を聴き、それからロシア音楽のチャイコフスキーやラフマニノフ、これが好きになって


交響曲5番には優れた曲が多くて、マーラーの5番、ベートーヴェンの5番、ショスタコーヴィチの5番。そんな中でベートーヴェンのの交響曲5番というのが非常に影響力が大きかったと思われるんですね。これば僕の推測ですが、後の作曲家はみなこれにプレッシャーを受けているというか。

マーラーは、交響曲に番号をつけていく中で、8番はつけなかった、なぜならベートーヴェンが8番を作って亡くなったから、8番と付けたら自分が死ぬんじゃないかと思ってたんですね。しかしその曲に8番と付けたらマーラーはなくなったんですよ。

マーラーの5番は、ベートーヴェンの運命に影響を受けているというか、そのモティーフが出てくる。そしてこのチャイコフスキーの交響曲5番も、そのモティーフが出てくる。最初暗い感じでクラリネットがそのテーマを弾き、オケと掛け合いをする。2楽章でオケにまたクラリネットが突然このテーマで襲い掛かる、というように。3楽章は、ワルツのリズム、チャイコフスキーが得意なワルツですね。そして4楽章は勝利のテーマというか歓喜のテーマに流れ込んでいく。1楽章の苦悩から歓喜へという流れです。

どうぞお楽しみください、


感想など


ピアノ協奏曲第1番

全体的にピアノの音は抑制気味でした。音響については評判の良いホールですが、満員の客席で聴いていると、評判ほどは容易には響かない感じのホールのような気がします。

1楽章は、最初の和音の畳みかけもおとなしく、インパクトが薄いような印象でした。それでも最後はオケに勢いがつき、そこでピアノにエンジンが入ったように盛り上がって豪快に終わりました。1楽章の終わりで拍手したい気分でした。

2楽章は、訥々とつぶやくような弦楽器で始まり、クラリネットが優雅に主旋律を奏でます。ピアノもそこに乗ってきて、美しい主題がオケの様々なパートとともに次々と歌い上げられていきました。途中の中間部は、すばしっこいリスが野原を駆け回るように、軽快に進みます。再び主旋律が戻ってきて、ピアノが高音のトリルが煌めきながら降り注ぎ、とても美しかったです。

3楽章は、オケが勢いよく疾走するところにピアノも加わります。チェロとコントラバスが重低音を響かせながら突き進む、迫力がありました。コンマスさんは、時折腰を浮かせながら、ダイナミックに演奏します。ピアノがコーダに入る前の壮大な演奏のあたりで、ようやくピアノにエンジンがかかったような感じでした。コーダに入り、オケが勢いと音量を増して、ぐんぐんパワフルに盛り上がるのに合わせ、ピアノが迫力と音量を増して豪快に盛り上がり、激情が炸裂して盛大に終わりました。すごかったです。

すぐにブラボーの声が起こり、大きな拍手。

佐渡さんと角野さん、弾き終わると肩を抱いてねぎらい、2人そろってステージに並んでお辞儀をし、舞台袖に戻りました。もう1度2人でステージに戻り、佐渡さんはオケの各パートの方を立たせて拍手。その後角野さんぼ隣に立ち、角野さんの手をがっちり握って高く掲げてからお辞儀をし、舞台袖に戻りました。次に角野さんは1人でステージに戻り、アンコールを弾き始めました。チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」より「金平糖の踊り」です。コンマスさんは興味津々の様子で、角野さんが演奏する様子を見ていました。

角野さん、アレンジも加えながら軽やかに弾き終わると、盛大な拍手の中、お辞儀をしてさっと舞台袖に戻ろうとしたとき、左ブロックの左端近くにいた女性2人が、客席からステージ上の角野さんに近寄り、花束とプレゼントを手渡していました。それを受け取り、角野さんは舞台袖に消えました。


私が気になったのは、お客さんの拍手の中、客席を向いていたオケの方が笑っていなかったことです。ちょっと渋い顔をしている方が何人かいて、あまり思うような演奏ができなかったのかなと思ったりしました。


休憩時間、通常は開放していない通用口・非常口にスタッフを配置して開放し、ホール内のお手洗い以外に、ホールの外のアクロス福岡の施設内のお手洗いにもチケットの半券を見せると行けるように手配されていました。早く済んでありがたかったです。

交響曲第5番

1楽章は、鬱然とした暗いテーマが、沈んだり時に激しく膨れ上がったり、心の浮き沈みを表わすかのように続きます。雪に閉ざされた極寒のロシアのどこまでも広がる凍土とそこを吹き抜ける冷たい風、先の見えないやるせない思いが押し寄せてくるようでした。

2楽章は、1楽章に輪をかけてさらに暗く沈んだ淵から次第に、何か茫洋とした希望の光が差し込んで、落ち着きを取り戻し、平穏な世界へと少しずつ導かれていくような感じでした。

3楽章は、ワルツのように軽やかに踊るようなリズム、明るく心も軽やかになるようでした。

そこから4楽章に至って、1楽章では暗く奏でられていたテーマが、にわかに誇らしげに、勝ち誇ったかのように響きわたり、最後は勢いよく盛り上がり終わります。非常に素晴らしかった。

全楽章通して表情豊かでスリリング、まったく飽きることがありませんでした。


最後の音が鳴り終わるや否やすぐにブラボーの声が響き渡りました。盛大な拍手。佐渡さんは客席を向いてお辞儀をします。滴る汗を手で拭いながら、情熱的な迫力満点の指揮でした、

左側ブロックの端近い最前列にいた女性2人が、舞台袖に戻る佐渡さんに花束とプレゼントを渡していました。

アンコールのセレナーデ、優雅で明るく、これも美しかったです。

おわりに

ピアノ協奏曲は、全体としてピアノが抑制気味で、おとなしかったように聞こえました。オケはいずれもダイナミックでパワフル、素晴らしかったです。

i以上、とりとめのない感想でした。


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