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ザ・孤独2023

「おれ、友達ぜんぜんいないんだよなぁ」
ひさしぶりの同窓会でボヤいたら、学生時代たいして親しくもなかったネクラなクラスメイトが話しかけて来た。
「ぼくも友達いないんです」
するとクラスのお調子ものだったやつが、
「だったら二人、友達になればいいじゃん!!」
と叫び、ネクラ男と友達にさせられてしまった。

ネクラ男の名前は、根倉沈三(ねくら・ちんぞう)。

体長三キロメートル。
伝説巨神イデオンと戦って引き分けたことがある。

常に半ケツを出していて、そのことを恥ずかしいとも思っていない。

その半ケツ部分が太陽を反射して、常に明るいので、新宿は「不夜城」と言われている。

それにひきかえ、このおれは、

頭の上半分がなくて花瓶になっており、そこに造花をさしている。
身体はファミレスの料理を運ぶロボット。

唯一の持ち物は、ぐにゃぐにゃにしても丸めても元に戻るのがウリの、
80年代に売っていたルパン三世の人形のみ。

ふと見上げると、日が暮れるところだった。

夜が来るとオオカミがやってくるので、同窓会は解散。

根倉沈三(ねくら・ちんぞう)もイデオンとの再戦にそなえて夜の街に消えた。

おれは仕方ないので「一人二次会」としてバーに入った。

そのバーでは八十歳くらいの老人が、半裸でファイヤーダンスをやっていた。
客もいなかったし、カウンターも椅子もなかった。

老人はファイヤーダンスに夢中で、おれが入ってきたことに気づきもしなかった。
店内にはなぜか「グリーングリーン」の曲がエンドレスで流れていた。

(完)

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というか、承認欲求も満たされないのにテキスト書きませんよ。


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