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映画は本数だけじゃないって話し

20代の前半、東北の田舎から上京、運良く、あるエンタメ業界の門を潜った。
それまで、テレビの洋画劇場を観たりちょっとおしゃれな単館ロードショーに足を運んだりもしたし
半券をノートに貼って感想を書いてりしていたから
”私なりに”映画を愛していたと思う。

ところが、私の居た業界ではこんな映画愛など取るに足りぬわ!とばかりに
知らない映画の名前や監督、ストーリー(あらすじ)が行き交っていた。
それをパロディにしたりとか、元を知らないと作れっこないものだ。

ブルースブラザースは大好きだったけど、マルクスブラザースなんて聞いたことないし、チャップリンは知ってたけどバスターキートンは漫画家と思っていた。

「えー!あなたは黒澤明の映画を1本も観たことがないんですか!」
「本当にキミは”モノ”を知らないよねー。」

当時は「新人類」と言われていた私の時代。
知識がないなら増やせば良いじゃん、映画の内容が好きか嫌いかは置いておいて
その年、とにかく1年中映画を見まくった。
近所に一軒しかなかったビデオレンタル屋さんと乗り換え駅の下北沢駅前にあったTSUTAYAを利用して、300本は見たと思う。単純計算で1ヶ月25本!

箪笥の上に置いた14型のテレビデオは画面が小さい上にモノラル音声で、
とかく黒澤映画が見にくくて聞きにくくて、だけど三船敏郎の渋さはわかった。
「七人の侍」を元に作られた「荒野の七人」では、
スティーブマックウィーンにキュンキュンして「大脱走」に行きつき、何回も観たりした。
ティムバートンの映画のテイストが好きだった。

あれ?意地で観まくった映画たちははそこまで記憶に残ってはいないってことかな。

だけど、私の中では名作がたくさんある。
「スタンドバイミー」
「グーニーズ」
「アメリカングラフィティ」
「アウトサイダー」
「さらば青春の光」

何より1番好きなのは17歳の時に観た
「ワンダラーズ-The Wanderers」

日曜洋画劇場(淀川先生の解説)の日本語吹き替えだった。
ニューヨークのチーム争いがテーマで
何かWest Side Storyの焼き直しみたいな感じだけど
かといって恋愛だけでもなく、
若さゆえの苛立ちと汗臭さ、ニューヨークの街の色までも滲み出しているようで、
何回も観た。
役者の生々しさもサウンドトラックもあの当時の匂いを思い出せるくらい。

月日は流れー私はアメリカに拠点を置いている。
ある日、偶然にSNSで知り合いの写真で
「The Wanderers」
がこの街に居たことを知った。

それは、海辺の街の壁画。
もうすでに新しい絵になっているという。

自分が食いついてでも成功したい世界だと信じて、その世界に付いて行きたくて必死で観まくった300本の映画。
それよりもやっぱり自分の好きな映画を胸を張って「好き」と言いたい。
そしてこう叫びたい。

「私、青春映画、大好き!」

#映画にまつわる思い出

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