「勝手に DI 室」 DPP-4阻害薬と類天疱瘡

ヒヤリハット事例集・分析事業から 2023年 No.11 の内事例 3 にDPP-4阻害薬における「類天疱瘡」についての薬剤師の受診勧奨が報告されています。https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/sharing_case_2023_11.pdf


DPP-4阻害薬は、「類天疱瘡」の発生率が比較的高めだと報告されており、主な発症部位は、四肢や体幹の緊張性水疱 および水疱(85.51%) および紅斑 (82.61%) だとされています。(

発症頻度

発症頻度はどのくらいでしょうか? 糖尿病治療でDPP-4阻害薬を使用することで約3倍増加したという報告(オッズ比:3.2(95%CI,1.9-5.4))()、日本の医薬品副作用報告データベースからは、報告オッズ比:87.56 (72.61–105.59)というものもありました。(

DPP-4阻害薬によって違うのか?

では、DPP-4阻害薬間での発生率の違いはあるのでしょうか?
先ほど挙げた日本の医薬品副作用報告データベースに基づいた報告オッズでは、vildagliptin:105.33(88.54–125.30)  linagliptin:28.96(21.38–39.23) anagliptin:10.84(3.46–33.96) などとばらつきがある事が分かりました。

また別の報告では、vildagliptin:10.7(5.1-22.4)linagliptin:6.7(2.2-19.7)

他の報告では、vildagliptin HR:2.411(1.325-4.387)linagliptin HR:2.550(1.266-5.136)sitagliptin 0.911(0.508‐1.635)alogliptin 1.600 (0.714‐3.584)であった。

これらをざっとまとめると以下のようになりました。

参照した文献はほんの一部ですが、どうやらビルダグリプチンやリナグリプチンは、皮膚病変やかゆみなどの症状があった場合、皮膚科受診を勧奨した方がベターかもしれませんね。

中止するべき?

日本皮膚科学会ガイドライン 類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)診療ガイドライン補遺版を参照すると、DPP-4 阻害薬に関連して類天疱瘡が生じている可能性が疑われた場合は、DPP-4 阻害薬を中止する弊害がなければ中止してよいと考えられておりますが、言うまでもなく、そこは皮膚科医と内科医(DPP-4阻害薬を処方している医師)との連携が必要かと思われ、 その橋渡しとして情報提供していくのが良いでしょう。

参考

Ann Pharmacother. 2022 Feb;56(2):205-212. PMID: 34105395
JAMA Dermatol. 2018 Oct 1;154(10):1152-1158. PMID: 30090931
J Diabetes Investig. 2023 Jun;14(6):756-766.PMID: 36897510
Diabetes Care. 2018 Sep;41(9):e130-e132. PMID: 30002201
日本皮膚科学会ガイドライン 類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)診療ガイドライン補遺版


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