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HPVワクチンをめぐる論争

のnoteにコメントをつけてみた。

このnoteである。

最近、いくつかの悪性腫瘍がウイルスによるということがわかってきている。そのため、悪性腫瘍を引き起こすウイルスをがんウイルスと呼称するようになってきている。

がんウイルスの中にはこのHPV(human papilloma virus)の他にもHTLV-1やB,C型肝炎ウイルスなどが有名である。HTLV-1による成人T細胞白血病は母乳を介した母子感染を起こし、B,C型肝炎は肝硬変から肝細胞癌を引き起こす。そのため、HTLV-1感染予防のためには母乳制限を行うし、肝炎に対してはB型肝炎ワクチンの接種やC型肝炎のインターフェロン治療や使い捨て注射器の普及などによる血液感染の防止などの対策が施されてきている。

HPVは性感染症であるぎ、男性には発癌などの重大な疾患や障害は起こさないため、男性が保有するウイルスが性行為によって女性に感染しうる。そのため、性行為を行う前に女性にワクチンを接種してウイルスに対する免疫をつけることが重要であるとされる。豪州などでは男性へのHPVワクチンの接種が導入されていると聞く。

HPVワクチンの導入にあたっては日本では海外での接種によるワクチンによる副反応の報告が知られていたため、ワクチンに対する拒否反応が当初より醸成されていた。また、当初開発された欧州での流行株の型と日本での型が一致しないという説もあった。

平成25年に承認されたワクチンは定期接種として接種が開始されたが、一部で慢性の痛みや運動障害といった非特異的な神経症状を示す事例が認められたため、一旦、接種勧奨が停止されたまま現在に至っている。

信州大学の研究ではワクチンを接種したマウスに自己免疫反応が起きているという報告がなされたが、のちの検証では不十分な研究とされ、適切な結果としては認められないということが明らかとなった。

また、様々な症状については認知行動療法によって全員ではないが多くの事例で一定の改善が認められることが示された。また、名古屋市の調査ではワクチン接種者と未接種者で副反応とされる症状の発現に有意差はなかったという結果が得られている。

私個人としてはかつて日本小児科学会の学術集会で副反応の事例報告の後のディスカッションでの激しいやりとりを見てから、あまり積極的にこの話題に立ち入ることは避けている。

現在、9価ワクチンまで開発されているのだが、厚労省の承認は滞っており、接種勧奨も再開されていない。

子宮頸癌は一般的な癌が50歳代から60歳代以降に発症しやすくなるのに比べて20歳代や30歳代で発症しやすいという特徴がある。つまり、子育ての最中や仕事が乗っている人生の最盛期に発症する癌である。

十万人に十数人なのだから捨て置けという考えもありかもしれない。癌患者の多くは高齢者なのだから患者数の少ないマイナーな癌など放っておけという意見もあるだろう。そんなところにお金を使うなら高齢者の医療に使え。若者などが少々悲惨な死を遂げたところで、高齢者が苦しむことを考えれば無視できるという考え方もありうるのかもしれない。

けれども、私は子供や若者たちにこそお金を使うべきだという考えである。彼ら、彼女たちが人生を精一杯生きるためにこそお金を使うべきじゃないか。

若者が「さあ、これから子供を持とう、子育てをしよう、仕事をしよう」と意気込んだ時に子宮頸癌が見つかって人生を失うことになるのはあまりにも不幸ではないか。そんなことにならないように制度を整えるのが大人の責任ではないか。救う手立てはあるのである。



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