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優生学?マジで信じているの?

優生学、優生思想が誤りであることはメンデルの法則を考えれば自明のことだと思うのだが、左派の人はなぜそう言わないのか理解に苦しむのである。

遺伝性疾患において、多くの常染色体劣性(潜性)疾患の場合はホモ接合でないと発症しない。つまり、疾患因子を持っていてもヘテロ接合の人は表現型は正常である。つまり、いくら患者を虐殺したところで保因者は「正常者」として残るので子孫の世代に患者は出現してしまうことになる。ヘテロ接合の人と真の正常者である「正常遺伝子」のホモ接合の人とは遺伝学的検査をしないとわからないわけである。

つまり、ナチスがT4作戦で遺伝病患者を虐殺しまくったことは遺伝学的に全く無意味なことであった。もし、「劣等遺伝子の排除!」を完全に行おうとすれば、むしろ患者だけではなく、表面上は金髪碧眼の完璧なアーリア人種であるドイツ人の中から下手すると人口の1%ほど存在する保因者を探し出して全員虐殺する必要があった。人の遺伝子の数は2万種であると言われている。そのうち1割の2千種の遺伝子異常が重篤な疾患を引き起こすとしても、そして、保因者の確率が平均1%ではない、0.1%だということであったとしても、0.1x2000=200%ということになる。つまり、金髪碧眼の完璧なアーリア人種のうち、優生学、優生思想では生き残る者は計算上はいなくなるのである。

ちょっと勉強した半可通は「ほ、ほな常染色体優性(顕性)遺伝はどうやねん!」というかもしれない。確かにこのタイプの遺伝形式では疾患遺伝子がヘテロ接合でも発症しうる。「しうる」というのはヘテロ接合の変異を持っていても発症しない人もいるからである。このタイプの遺伝形式で、ヘテロ接合を持つ人で実際に疾患を発症する率を浸透率という。もし、このタイプの遺伝形式を持つ人が重症の疾患を発症するならば、そもそもずっと入院したりしなければならなかったり、寝たきりだったりしてなかなか結婚できなかったり、結婚しても挙児に至らなかったりするため、ナチスが何か介入をかけなくても自然に血統が絶えてしまうことが多い。逆にいうと、この形式の遺伝疾患で家系が続いているとするならば、とりあえず結婚して家庭生活を営み、子孫を残せるくらいの比較的軽症の疾患が多いということになる。そういう疾患までナチスが草の根分けて探し出し、虐殺しまくったとしても、問題は突然変異である。親に何も疾患がなかったとしても子どもの遺伝子に突然変異が起これば疾患が現れてしまう危険は少ないながら常にあるのである。金髪碧眼の優れたアーリア人の子どもが常に何の病気も持たないという保証は実はどこにもない。

「私はナチスではない。」と言いながら優生思想を信奉する人にとっては何の慰めにもならないnoteを書いているわけだが、結局はどういうものであれ、人は与えられた肉体や精神を駆使して精一杯生きることが必要だということが結論である。

当然のことながら、老人の命の選別とか外傷性疾患などの後天性疾患の後遺症を「優生学」、「優生思想」に含めようという議論は最初からおかしいのである。

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