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面会交流と高葛藤

このnote、大体妥当なことを述べているような気がするが、私も法曹ではないけれど、一点だけ誤解を生みそうな記述があったのでちょっと調べてみた。

①子の意思
父母の葛藤が激しく、子が明確に面会を拒否している場合、子の福祉を害する可能性が高いとして、面会交流を認めた原審を取り消し、認めなかった例(東京高決平19.8.22)

この事例なんだけれど、子の意思と書いておきながら「父母の葛藤が激しく」から始まっているので、父母の葛藤が高ければ面会交流を取り消してもいいという意見に読めなくもない。

それでネットを探してみればそれに言及している記述を見つけた。

上記ページ(大量に判例の要約がある)に言及があったので引用してみる。


3-2007.8.22
未成年者の福祉を害するおそれが高いとして、面接交渉を認めた原審判を取消し、面接交渉の申立てを却下した事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年8月22日決定
[出典]家月60巻2号137頁
[事実の概要]
母(昭46年生)と父(昭42年生)は、平成6年に婚姻し、平成7年と平成9年に二子を(高裁決定時、11~12歳、9~10歳)もうけた。母は平成13年に単身帰省して別居を開始し、平成14年に二子を通園先から連れ帰り、以後監護養育した。それ以来、母と父は交流が途絶え、父は二子の居所さえ知らされていない。母が提起した離婚訴訟において、平成16年、親権者を母と定める離婚判決が確定した。
父は、平成17年、面接交渉の審判を申立て、平成19年、原審の東京家裁は「夏季休暇に1回2時間」の面接交渉を命じた。母が抗告。
[決定の概要]
二子は、現在父とは面接したくないことを明確に述べており、その基礎には、面接交渉の調停係属中に父が二子に位置情報確認装置を潜ませたラジコンを送ったことがあること、母は、父が位置情報確認装置を潜ませたり二子の居所の探索のため母の親類や恩師に対して脅迫的言辞を用いたことなどにより、父が二子を連れ去るのではないかとの恐怖心を抱いていることから、面接交渉は、二子に父に対する不信感に伴うストレスを生じさせ、二子を父と母との間の複雑な忠誠葛藤の場面にさらすことになり、その結果、心情の安定を害するなど、その福祉を害する恐れが高いので、これを認めるのは相当でない。

これをみると、父ちゃんは子供に「位置情報確認装置を潜ませたラジコンを送った」とあり、そのことがばれたのだろう。子供たちが父親と会いたくない、と明確に意思表示したという流れがある。まあ、連れ去り別居で父ちゃんも子供の居場所を知りたいという気持ちがあったのだろうけれど、逆にそれが子供の不信感を生んだわけだから自業自得と言うべきだろう。

そりゃ母親も父親に対して不信感や葛藤を抱いただろうけれども、最も重要な部分は単なる「葛藤」ではなくて「忠誠葛藤」を強いたと言うところにあるのではないか。これは両親が両側から手を引っ張ったときに子供は父ちゃんと母ちゃんのどちらに向かえば良いのか迷うことであろう。これが忠誠葛藤である。

父ちゃんと母ちゃんが喧嘩して高葛藤になっているわけではない。

この事例で言えば、とうちゃんはプレゼントのラジコンにGPS装置みたいなものを入れたわけである。普通に「ええっ?」てなるだろう。けれども父ちゃんは父ちゃんである。自分たちの気持ちもわからない、そんな裏切り者の父ちゃんには会いたくない。でも血を分けた父ちゃんである。裁判所が面会交流を指示すれば嫌でも会わなきゃならないだろうか。こういう葛藤であるだろう。

こういう場合には裁判所も無理に会わなくていいよ、という判決を出したということであろう。

しばしば面会交流反対派の主張されていた、「あんな元夫は気にいらないざます。あんなの人間扱いする必要もない、キーっ!高葛藤よ高葛藤。子供が会いたい?そんなの騙されているだけ。あんなモラハラ非人間の元夫に会ったらうちの可愛い子が汚染されるザマスっ!絶対面会交流なんてさせるもんですか!高葛藤の場合は面会交流なしッ!」っていう叫びとは次元が異なるのではないだろうか。


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