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品不足

これ、今回の新型コロナウイルスには口腔粘膜の細胞にウイルスが取り付くための取手、つまりレセプターがあるので、ウイルスは口腔粘膜の細胞に感染し、唾液中にウイルス粒子を放出してゆく。ポビドンヨードで口腔内をゆすぐと、放出されたウイルス粒子がポビドンヨードの酸化作用で崩壊するため、口腔内のウイルス粒子量が減少する、というSpeculationで良いのだと思う。

上の論文が多分そうなのであろう。つまり口腔粘膜の上皮細胞に新型コロナウイルスが侵入に用いるACE2レセプターがわんさか発現しているというものである。

つまり、口の中に飛び込んだ新型コロナウイルスがこのACE2レセプターを取っ掛かりとして口の細胞に侵入し、感染を起こすのではないかということである。この時、舌の細胞に感染を起こすと味蕾といって味を感じる細胞の働きを止めちゃうから味がしなくなるという可能性があるだろう。

今回の新型コロナウイルス感染では味覚・嗅覚の障害が初期症状としてしばしば報告されているので、その原因、発症機序としては矛盾しないだろう。

嗅覚障害、つまり匂いがしないというのは鼻の嗅覚細胞の障害が一番考えやすい原因だと思うけれど、口腔粘膜から鼻腔粘膜に直接感染が進展しているのか独立に鼻腔に感染が起こっているのかはまだわからない。

私も昔、パラフォルムアルデヒドというホルマリンの親戚の物質の蒸気を吸い込んでしまったことがあり、多分その物質が嗅覚細胞を障害したためか、その後、結構一ヶ月くらい嗅覚がない状態が続いたことがあるけれど、匂いを嗅ごうとするとハナミズが出たりして大変だったことがある。

いずれにせよ、口腔粘膜上皮に感染したウイルスは自らのコピーを感染細胞内で合成し、放出し、それが唾液中に混じって消化管や気管・肺という呼吸器系に感染を広げてゆくという考えは合理的ではある。

ポビドンヨードでのうがいの有効性について、多くの人が疑問に思うところは、「確かにうがいをすることで唾液中のウイルス粒子は破壊されるだろう。けれども感染細胞自体は完全に除去できないだろう。」ということではないか。つまり、例えば1日に4回うがいをするとしても、1日24時間であるから、うがいとうがいの間隔は平均6時間である。その間に合成されたウイルス粒子は唾液中に放出され続けるだろうし、そのウイルス粒子は次のうがいをするまでおとなしくじっとしており、別の細胞に感染しないなどということは言えないであろう。

しかも、ポビドンヨードは他の細菌やウイルスも不活化する。本来、口腔内には何十億何百億の細菌やウイルスがひしめき合っており、コロナウイルスもその中で生存競争を強いられることになる。けれどもうがいにより殺菌することで、うがい後に放出されるコロナウイルスは、ほぼ無人の野を歩くことができるのではないか。そうなれば、感染先も選り取り見取りということになる。

だからこそ京大の研究でも「むしろ水だけのうがいの方が風邪予防効果が高い」という結果になったのではないか。

ポビドンヨードを効果的に予防に使おうと思うならば、例えば舌下錠にして持続的に口腔内にヨードを供給して殺菌効果を継続させるなどの別の方法を取る必要があるのではないか。(もちろんこれをするとヨードの過剰摂取という別の問題が出現するという可能性がある)

外出から帰宅した時にポビドンヨードでうがいすることで心理的な安心感を得てはいけないというつもりはないけれど、大騒ぎにしてポビドンヨードを買い占めに走らせ、品不足にさせたのはやりすぎだと思うのである。


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