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喫煙について

個人の自由です。おわり。

こう書いていれば気楽でいいのであるがなかなかそうもいかないのである。実際、ヘビースモーカーの医師も指折り数えられるくらいいる訳で、「お医者さんの先生の方もタバコ吸っているよね」と言いたい人もいるかもしれない。「肺癌になるとかCOPDになるとか言われるけれど、それは自分の体のこと、愚行権だ、自己責任だ」って言いたい人もいると思う。

けれども、小児科の立場からは子供のいる家族にはタバコを吸って欲しくはないんだよね。

一つには幼児による誤食があまりにも多いこと。

最近は流石に救急外来を担当することはなくなったので現状はわからないけれど、親の吸ったタバコの吸い殻を誤食しちゃう子供は多いんだよ。親にしてみればタバコは大人のもの、子供は触っちゃいけないものっていう意識があると思う。けれどもついリビングに忘れたタバコは子供たちにとっては親が美味しそうに吸っている興味深いものなんだ。2歳や3歳の子がその誘惑に負けてタバコをおもちゃにすることは責められない。母親が気づいた時には機嫌良く紙巻きたばこをバラバラにして中のタバコの葉が口の周りに付いているっていうことになる。

まあ、少量の誤食なら中毒症状も出ないだろうから経過観察で済ますってこともあるだろうけれど、いくら食べたかわからない時には胃洗浄を行う。

鼻から胃に長いチューブを突っ込んで生理食塩水を注射器で注入しては再び吸引することで胃を洗うわけだ。子供にしてみればいきなり押さえつけられて太いチューブを鼻に突っ込まれるわけだから大泣きである。見ているお母さんも泣き出すこともある。気持ちはよくわかる。やっているこちらも泣きたいもの。医者が泣いても始まらないから無表情で処置をする。何も出なければホッとするが、時々、タバコの葉が胃液に混じって吸引されて来ることがある。

胃洗浄してよかったねと思うわけだが、その後、しばしば保護者に説教していた。もちろん、禁煙のお勧めである。

もう一つは喘息発作だよ。喘息発作のある子供が受動喫煙すると発作が増えることは明らかなのである。もし、子供が喘息なのに無遠慮に喫煙を続けるなら子供を苦しめるだけである。

換気扇の下で吸うから大丈夫とかベランダで吸うから大丈夫というのは過信してはいけない。もちろん、部屋の中で無遠慮に吸うよりはマシだけれど、たまに受動喫煙が成立する場合があるのである。どうしても吸いたい人は家では吸わず、家から離れた喫煙所で吸うべきである。

喫煙が発癌を増やすデータはたくさんあるけれど、日本医師会のサイトを貼っておこう。


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