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20.琉球王府、最高の聖地~久高島~

 沖縄の旅も終わりに近づいてきた。はやり最後は琉球王府最高の聖地である久高島を紹介しないわけにはいかないだろう。基本的に観光で訪れた方は斎場御嶽(セイファーウタキ)から扁平な久高島を遥拝することになるが、本土の人々の多くはその聖地がもつ霊力(神力というべきか)についてわからない。ましてや島を訪れることなど思いもつかないだろう。それだけに聖地の空気を吸いたい、神の島をこの目で見たい一心で訪れてみた。決して多くの人が観光地として訪れる島ではない、泳ぐビーチも限られている。施設も充実していない。この島は興味半分や物見遊山で訪れてはいけないことは、島に一歩足を踏み入れた地点でわかった。

フェリーから斎場御嶽方面を望む①
フェリーから斎場御嶽方面を望む②(安座真港⇒徳仁港)

 安座真港からフェリーで約15分の船旅であるが、いわゆる離島であることには変わらない。海の心地良い潮風を受けながら斎場御嶽方面を見る。かつて琉球王府(1429-1879)の国王は最高の神女(ノロ)である聞得大君(きこえのおおきみ)を伴って久高島に渡り、礼拝したという。(後に斎場御嶽から久高島を遥拝する形となったようである。)まさにその海上の道を走っている。フェリーで約15分であるが当時は潮の流れをよんでいたとはいえ手漕ぎ船である。何時間要したのか?渡航に危険な状況も度々あったのではないか等の思いを巡らした。

聖地のひとつ(ヤグルガー)
ヤグルガー周辺の海

 港近くでレンターサイクルを拝借し、早速聖地巡礼である。ヤグルガーという湧き水が出てをする場所を見学した。空はどんより曇っており小雨も降ってきた。海もどす黒い。何とも自然の恐怖を感じる一瞬だった。物見遊山でないので、もちろん禊場所は撮影していない。

カペール崎からみた海

 島の突端にあるカペール崎(ハビャーン)にきた。ここは琉球創世神であるアマミキヨが天から降り立った地であり、琉球神話の聖地である。そこは何もない。エメラルドグリーンの海と波音、潮風だけだ。しかし神話の聖地という知識がなくても体全体で感じるものがある。海からくる自然の息吹なのか、霊気なのか、理屈や言葉では表現できないものがそこにはあった。みえないが確かに神は存在する…と。これはスピリチュアル的なことを述べているのではない。現地に立ってみての感想、感覚なのでこれ以上、話を広げるつもりはない。

島内の一本道

 実は6年前にもこの道を訪れていた。炎天下、暑い夏の日だった。一人歩いたが、周りに人はいない。直線道がカペール崎まで続くという。途中、ここは物見遊山で来てはいけない島なのだ!と感じた。恐らく疲労困憊だったのだろう。神からのお告げ?で引き返すことにした。今回、リベンジを果たした。神がお許ししてくれたに違いない。(私は無神論者であるが、理屈抜きでそう思った。)

神の宿る海

 久高島の海はこれまでに見たことのない、綺麗!と言う表現ではいい尽くせない輝きがあった。曇天模様も少しずつ天候が良くなっている。またところどころ雲の切れ間から太陽が射す。どんよりしていた海がブルーに豹変する瞬間だ!思わず自然の素晴らしさに唸ってしまった。神の海を見た!

フボ―御嶽(最高の聖域)

 最後に、最も重要な場所と崇められている、フボー御嶽を見学した。自転車が二台止められている。説明板の解説を口で読みながら何気なく御嶽を見ると、お二人が跪いて頭を垂れ拝礼されている。思わず自分の非常識な行動を恥じた。ここは日本でも有数の聖地である。一定の場所にはロープが張られ「何人たりとも立ち入りを禁ず。」とある。まさに禁足地である。今は中止されているが大きな行事イザイホーが行われる場所だ。こちらも脱帽して拝礼させていただいた。

イシキ浜に続く

 沖縄の最高の聖地、久高島を訪れた。そこには何もない。空と海と風、一本の道だけである。この場所を二度も訪れることができた。しかも神の海を目の当たりにした。では、なぜ久高島が最高の聖地となったのであろう。標高僅か17m、周遊距離で約8㎞、大津波が来れば島はひとたまりもない。磐座のような巨石がある訳でもない。敢えて回答とすれば海なのだと思う。これを理解したいと思うなら久高島を訪れる以外にない。
 また久高島は1960年代まで風葬が行われていた島としても有名だ。西海岸の崖面に風葬場所があるそうだが、おそらく禁足地であるフボー御嶽を含む聖域がそうなのではないか。芸術家岡本太郎が禁足地に入り、風葬場所を撮影したといった話もある。事の真相はわからないが、芸術家が惹きつけられるほどの魅力的、幻想的な島であることは、芸術家でない自分もわかるような気がする。観光で訪問するのではなく、聖地巡礼という心得をもって訪れる島であり、その気であれば神もお許しされるであろう。沖縄旅のラストは久高島が相応しい…そう確信できた。


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