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26.北のまほろば~三内丸山遺跡(青森市)~

 縄文遺跡と言えば、今や三内丸山遺跡を外すわけにはいかない。3月中頃でも青森県は雪が積もっていた。外は曇り空、遺跡公園は雪景色と雪国らしいイメージを醸し出していた。三内丸山遺跡が大いに賑わっていた縄文時代中期(約5000年前から4200年前)はこんなに雪があったのかはわからないが、グレーなイメージと遺跡とが妙にマッチしていた。

三内丸山遺跡出土土器(時期別)
出土土器群の陳列

 三内丸山遺跡は、世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」として登録されているが、そのうち秋田県の大湯環状列石と共に特別史跡に指定されている。縄文遺跡における特別史跡は、他に長野県の尖石石器時代遺跡と千葉県の加曾利貝塚の計4遺跡がある。まずは遺跡に隣接する「さんまるミュージアム」を訪れた。とにかく出土遺物が凄い!完全な形の遺物がほとんどでその迫力に圧倒される。三内丸山遺跡の概要としては、
①大規模な拠点的集落であること。(掘立柱建物、竪穴建物、墓、盛土(捨て場)、貯蔵穴が発見された。)
②膨大な遺物の量。(円筒形土器を中心に石器、ヒスイ、特に日本最多の2000点以上の土偶、動物、植物遺体が出土している。)
③当時の生活状況や儀礼、祭祀が具体的な形でわかること。
である。三内丸山に住んでいた縄文人(親しみを込めて三内丸山人と呼ぶが)約1000年の間、この地で定住し豊かな暮らしをしていたのである。

盛土層を斜めから見る(土器が挟まっている。下が古い時期)

 上記の写真は盛土層の断面である。各層(生活面)で含まれる土器の形が異なる。当然、古い時代は下の層である。簡単に1000年というが、三内丸山人の平均寿命を考えてみよう。縄文人骨の分析から男性31.1歳、女性31.3歳程度らしいので、1000年÷31.1歳≒32.1となり、32世代続いたことになる。これは適当に推測したのであり、血族が絶えた三内丸山人(当時は何と呼び合っていたかは当然不明。)も多々あったかと思う。しかし気が遠くなるような時間が過ぎていることに驚かされる。

土坑墓の説明板
道路跡(中央の舗装道)と土坑墓(左右の土盛り)

 三内丸山人の墓である。単純に土を掘り起こし、そこに遺体を安置する。中には副葬品と言えるかどうかはわからないが、生前、三内丸山人が使用していたかも知れない石器やヒスイ製のペンダントも埋葬されていたそうだ。これは明らかに人を葬る行為である。しかも道を挟んで両側のエリアに規則正しく分けられている。埋葬におけるルールがあったのだ。縄文人の埋葬方法や儀礼等については今後、機会があれば触れていきたい。

穴の開いたヒスイ玉
大型板状土偶(おおがたばんじょうどぐう)約5000年前

 上写真はヒスイ玉であり見事に穴を貫通させている。やはり新潟県糸魚川地域産のものである。何度も触れているように遠距離の交易があったのだ。楽しい想像だが、三内丸山人あるいは糸魚川のヒスイ商人?は陸路ではなく海上交通で交易したのではないだろうか。正に命がけの旅(丸木舟か?)である。その後、めでたく目的を達成した際の三内丸山人の笑顔はどれほどであったろうか。その夜の三内丸山の集落は豊富な食糧を囲み大宴会になったのではないか。縄文時代は人間模様を考えるだけでもワクワクする。下写真は大型板状土偶で十字形に作られている。頭部と動体部分が割れており別々に出土した様で、意図的に破砕した可能性もある。(高さ32㎝、幅24㎝、厚さ8㎝、重量1.8㎏)ミュージアムに入ると暗室の展示室があり大変目立つものである。何を思い作ったのか?精神的な祈りというより三内丸山人の精神的な余裕を感じる逸品だ!

大型掘立柱建物跡(6本柱の復元)

 三内丸山遺跡の全てを語りつくすのは困難である。ここでは遺跡公園でシンボル的な構造物である大型掘立柱建物跡(遺構は近くのドーム内に保存)の6本柱復元を紹介する。柱穴は3個×2列の計6個、柱間(柱と柱の間の距離)は4.2mを測る(35㎝の倍数が使用された可能性が指摘されている。当否は別として何らかの尺度はあったのだろう。)柱はクリ材で最大径103㎝、柱穴の深さは2.0~2.4mもある。古墳時代の大型居館でもこの規模には及ばない。この巨大なクリ材を6本をどの場所から調達し伐採したのだろうか?また建物跡の長軸が東西を向いている点も重要である。太陽の登る方向や影の動き、天体の位置等を観察した天文台であり見張り台であったのか、想像に想像を重ねてしまう。
 三内丸山遺跡は何度見学しても、次々と疑問と想像が湧いてくる、正に縄文ワールドである。遺跡を歩き空気を吸うだけでも都会では味わえない価値があるのだ。

COFFEEマロン(青森市内)
お洒落な珈琲カップ
レトロチック満載の店内

 話題を食にかえよう。青森市を旅して必ず立ち寄る店が「COFFEEマロン」さんである。いつもモーニングサービスを注文するが(¥500、コーヒー、トースト、卵付き)コーヒーは深みがあって美味しい。必見は壁一面に掛けられているアンティークな振り子時計である。レトロな喫茶店マニアなら、三内丸山遺跡の見学と合わせて是非訪れてほしい。特に朝は満席なので要注意だ。



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